「あと1年半しかない」。24年4月に施行されるトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制を控え、運送会社の社長は嘆く。
物流業界はドライバー不足と高齢化が深刻だ。全産業平均に比べて低い賃金と長い労働時間が大きな要因。全日本トラック協会によると、「賃金は平均に近づいてきたが、労働時間はまだ30%長い。若い人材を確保する上でも大きな課題」という。
時間外労働の上限規制は、ドライバーの労働環境を改善する上で有益だ。ただし、「上限規制を守ろうとすれば、1日当たりの走行距離が限られ、長距離輸送の場合、輸送に要する日数が増える」(運送会社社長)という。ドライバーが減る状況下で、時間外労働時間の上限規制を導入すれば、輸送能力は不足する。極論すれば、「物が運べない」事態も起こりかねない。これが物流業界の「2024年問題」で、政府や業界は対策を急いでいる。対策の一つで、共同配送の動きも広がってきた。
荷待ち時間や荷物の手積み・手下ろしの作業を減らせば、時間外労働を規制しても、輸送能力の不足が解消されるとの試算結果もある。発注から到着までのリードタイムを延ばせば、配車にも余裕が生まれ、輸送能力は上がる。問題の解決には「早さ」「便利さ」を求めてきた荷主や消費者の意識改革が不可欠だ。