今週末の8日は十三夜。十五夜の中秋の名月に次いで、きれいな月といわれる。栗や豆を収穫する時期と重なるため、栗名月とか、豆名月など風情ある名で呼ばれることも。十五夜は古く中国の中秋節が日本に伝わったの対し、十三夜は日本だけの行事らしい。歴史も意外に新しく、江戸時代に定着したとされる。
アジアでは、月の模様がウサギに例えられることが多いようだが、ヨーロッパではカニ、アメリカでは女性の横顔、アラビアではライオン、中南米ではロバに見えるという。同じ月を仰いでも見え方は千差万別。アジアでウサギが多いのは、中国の昔話から来ているようだが、ウサギが杵(きね)を持ち餅をつくとの見方は日本独自のようだ。
そんな話を知人としている時、ふと思い出した取材があった。ある工場の社長いわく、「汗水流して働くことは尊いことだと教えられてきた。今は体を動かすより、知恵とアイデアでもうける方が良いような時代になったのでしょうかね」。真面目に働いても報われにくい自らの仕事を寂しげに語った。
急激な円安を背景に国内生産の見直し機運が出てきた。コスト論だけでなく、生き方や働き方が変わるなか、物作りの現場への再評価も含まれているように思う。餅をつくウサギは、額に汗して働いてきた日本人の美徳を象徴しているのかもしれない。