《めてみみ》物作りの新たな視点

2022/08/23 06:24 更新


 イタリアのファクトリーブランドを卸売りしている会社が、コロナ禍を機に国産のオリジナルブランドを始めた。上質な素材ときちんとした縫製で仕立てた服を企画した。出来はすこぶる良く、セレクトショップや百貨店に売れた。

 ただ、工場とのやり取りは思っていたより手間がかかった。日本ではデザインとパターン、生地、裏地からボタンや芯地まで何をどこに使うか細かく指定しないといけない。

 イタリアではパターンと仕上がりの大まかなイメージ、素材や副資材の色や柄を伝えれば、事細かく指示をしなくても問題なく作ってくれる。「献立を伝えると、材料を準備して料理を作ってくれる感じ」だ。

 納期に対する考え方も違う。日本の工場は「頑張ればこの日までに」という日程を組む。職人が途中で休むとか想定外のトラブルを計算に入れていないので、最初の期日より遅くなったりする。イタリアは遅れない。トラブルは起こるし、夏のバカンスだってしっかり楽しむが、それも想定に入れて納期を伝えてくる。

 指定通りに、なるたけ早く作ろうとするのは真面目な国民性ゆえだろう。でも出来上がりをイメージする想像力を養って、納期も無理せずに確実に間に合うタイミングで作るほうが、日本の物作りが国内外で評価されるきっかけを増やすことになると思う。



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