セールス(販売)からソリューション(課題解決)に百貨店経営の重点が移り始めた。買い物欲を満たす品揃えを追求した時代もあったが、昨今は「暮らしに寄り添う」「困りごとを解決する」といった言葉をよく聞く。
「特別な日に、自分へのご褒美に、お客様にとって一番最初に頭に浮かんでもらえる店でありたい」(細谷敏幸三越伊勢丹社長)。「百貨店らしさを生かしたモノ、コト、サービスの提案による解決支援ビジネスが取り組むべきこと」(山口俊比古阪急阪神百貨店社長)など、本紙のトップインタビューでもその傾向がうかがえた。
背景には、マスマーケティングが様々な場面で通用しなくなったことがある。適時・適品・適価のつもりで提案した商品の正価販売率の低下が止まらない。セールに対する集客力の低下が顕著になったのもその一例だろう。趣味・嗜好(しこう)の多様化が進み、〝一色〟の価値提案だけでは収益の最大化が難しい。
ソリューションで目指すのは「ライフタイムバリュー」(LTV、顧客生涯価値)。顧客とつながり続けることで、得られる対価を一層高める考えだ。外商売上高がコロナ禍でも伸びているのは、高い可処分所得とともに、客との強い関係性があるから。非富裕層のLTVをどう高めていくか。百貨店だけでなく、業界全体の課題なのかもしれない。