本格的なフィジカル(リアル)のファッションショーの復活となった23年春夏パリ・メンズコレクションには、日本のブランドも数多く参加した。ショーのほか、プレゼンや独自の展示会を行うブランドもあった。コロナ禍で2年間、パリで見せられなかっただけに、感慨もひとしおだろう。
一方、パリでのフィジカルに復帰しなかった日本のブランドには様々な理由がある。渡航費の高騰というのが最たる理由だが、中国で生産するサンプルの納期の不透明さやモチベーションの変化を理由にするデザイナーもいた。コロナ禍の2年間の試行錯誤は、立ち止まり考える時間をデザイナーに与えることにもなった。パリで再び見せる必要はあるのかと問うたデザイナーも多いと聞く。
大切なのは、ファッションショーという仕掛けを通じてどういうビジネスを構築するか。確かにフィジカルのファッションショーは圧倒的に情報量が多く、一瞬のうちに、見る者にデザインの意図を伝えることができる。しかし、それが、どれくらいの新しい販路や売り上げとして還元できるのかも冷静に見通す必要がある。
今の自らのブランドビジネスにパリ再開が間尺に合わないのであれば、スパッとやり方を変えるのも大切だろう。いかにビジネスをデザインするのかを考えるのもまたデザイナーの仕事である。