《めてみみ》土用の丑

2022/07/19 06:23 更新


 6月末からの気温の上昇で、早くも夏バテ気味の人もいるだろうか。長期的にも今年の夏は全国的に気温が高いとの予報。

 今年の夏は、土用の丑(うし)の日が7月23日と8月4日の2回ある。土用の丑といえばうなぎ。始まりは諸説あるが、江戸時代に蘭学者の平賀源内が夏に売れないうなぎ屋に、「本日、土用丑の日」と張り出させて広まったという説がよく知られる。丑の日に「う」の付く食べ物が良いとされることにちなんだようだ。狂歌師の蜀山人(大田南畝)による「土用の丑の日にうなぎを食べると病気にならない」という狂歌がきっかけという説も。

 うなぎが庶民の味として定着したのは江戸時代のようだが、奈良時代に編纂(へんさん)された『万葉集』に大伴家持が「夏痩せにはうなぎが良い」という和歌を残している。

 源内や蜀山人の説は確かなものではないが、秋から冬に旬を迎えるうなぎを夏に売るための優れたプロモーションだ。売れないと諦めるのではなく、古くからの知恵や健康という切り口をからませ、人々の注意を引き、購買の動機付けとして定着させた。

 暑い夏にスタミナをつけて乗り切りたいところだが、目下、コストプッシュ型インフレの真っただ中。実質所得は減っている。落語の「しわい屋」ではないが、うなぎを焼くにおいでご飯を食べる節約方法も、笑い話ではない。



この記事に関連する記事