《めてみみ》国の産業支援策

2022/06/02 06:24 更新


 経済産業省が30年に向けた繊維産業の方向性と重点政策を示した「繊維ビジョン」を5月に公表した。昨年11月からの産業構造審議会繊維産業小委員会での議論をまとめた。繊維ビジョン策定は07年以来、15年ぶりだ。

 注目すべきは「ファッション・ビジネス・フォーラム」(仮称)と「繊維産地サミット」(同)の設置だ。いずれも、コロナ禍で厳しさが増す国内産地企業の活性化策の一環。フォーラムは産地企業とデザイナー、インフルエンサー、スタートアップなどとのビジネスマッチングの場を提供し、新しい事業の創出を目指している。産地サミットは産地がある地方自治体が連携する場で、産地間の協業促進も狙う。

 経産省は昨年11~12月の有識者会議「ファッション未来研究会」での議論も踏まえ、21年度補正予算を使い、産地の中小企業とクリエイターの協業による海外需要拡大を支援する事業を開始した。蜷川実花氏、森永邦彦氏、落合宏理氏ら参加クリエイターを決定し、協業する事業者を公募中だ。

 事業環境の悪化が背景とはいえ、大きな課題である産地活性化を中心に、国が繊維・ファッション産業政策に力を入れているのは、業界にとって良いことだ。政策で効果を発揮するためには、情報の周知徹底と業界団体を含めた産業界とのきめ細かな連携が欠かせない。



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