《めてみみ》痛み分け

2022/05/19 06:24 更新


 商社の衣料品OEM(相手先ブランドによる生産)事業が苦境に立っている。昨年より〝マシ〟だがコロナ禍前の水準には届かず、利益面が厳しい。

 前期はベトナムなど東南アジアの都市封鎖、原材料や輸送費の高騰、コンテナ不足による物流停滞などが響いた。そこに急激な円安、中国での都市封鎖による供給網の分断が追い打ちをかける。「三重苦どころではない。経験したことがないほど様々な要因が重なり厳しい」状況。特に低価格ゾーンで利益確保が困難だ。ある繊維商社の社長は「このゾーンでは価格転嫁ができていない。今後受注をお断りすることも出てくる」と話す。

 どこも不採算取引を続けられる余裕はない。取引先の業績も良くなければ痛み分けで、苦しい時期を何とか一緒に乗り切ろうとなるが、大幅増益を達成した取引先もあるだけに「やりきれない」のが本音ではないか。

 もちろん高収益を維持し、株価を上げ、株主に配当することは重要だ。上場企業はそれをずっと求められる苦しみもわかる。しかし大きな利益を出すだけが使命ではないはず。自社はもうかるが取引先は疲弊する。そこに持続性はない。資本主義の中身が変わりつつある今、株主ファーストではなく、社員や取引先など様々なステークホルダーとの共存共栄が持続可能な成長につながると信じたい。



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