「商業施設の店ではあっという間だったんですけど」。そう言って、あるセレクトショップの路面店で店長が「ニューバランス」のスニーカーを指さした。米国製で税込み3万円超えだが、デザインと履き心地の良さで人気のモデルだ。
秋口に入荷した分は全店で完売し、12月に少量が再入荷した。施設内の店舗ではそれもすぐに売れ、ECサイトにももう在庫はない。だが、その路面店ではしばらく売れずに残った。
同じ商品でも店の立地によって売れ行きに差が出るようになったのは、店ごとに独自の情報発信をするようになってからのことだという。おすすめ商品の紹介や新商品の入荷日告知は各店のスタッフが個別に判断して行う。
当然のことながら、商業施設内の店だと、仕事帰りや休日に施設を利用する客層が好みそうな商品にまつわる情報が多くなるし、都心の路面店になると、平日でも週末でも、服好きがわざわざ店に足を運んでチェックしたくなるようなエッジの利いた服の紹介がメインになる。
客が普段見ているのは自分がフォローしている店のSNSであり、同じ店名でも路面と施設内で客が事前に得る情報は異なる。だから選ばれる商品も売れる速度も店ごとに変わる。ネット起点で買い物が始まる世の中においては、チェーン専門店にも個店経営のスタンスが求められる。