繊維商社では田村駒、モリリン、三共生興などで新しい中期経営計画が今期スタートした。既存事業のブラッシュアップに加え、グローバル販売の強化や新規事業の開発、グループ連携強化などが主な柱だ。
緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出や延長が続き、繊維・ファッション市場の回復は鈍い。8月の商況も芳しくなかった。商社ではファッション向けが厳しいため、それを補う柱の育成が必要。とはいえすぐに成長するわけではない。これまでの仕込みの成果が問われそうだ。
田村駒は今期、成長分野と位置付ける生活関連資材を強めるため担当営業部を事業部に格上げした。豊島は〝ライフスタイル商社〟を標榜(ひょうぼう)し、GSIクレオスは繊維と工業製品の専門商社と掲げる。各社とも事業領域の拡大で、成長を目指している。
一方で繊維商社の強みを失っては元も子もない。繊維・ファッションの一本足打法はバランスが悪いが、一つの業界で長く事業を続け、幅広い商材やネットワーク、顧客、販路を持つ強みは欠かせない財産だ。これらがベースにあるからこそ、この厳しい状況下でも何とか踏ん張りきれている。商社の果たすべき役割は何か。コロナ禍で大きく変化しただろう。事業環境の一変で求められる役割やニーズが変わった。そこに新たなチャンスが生まれている。