《めてみみ》瀬戸内のハワイ

2021/08/25 06:24 更新


 日本各地にハワイを冠した風光明媚な場所がある。その一つ、瀬戸内のハワイと言われるのが山口県の周防大島。景色だけでなく、歴史的なつながりも深い。明治以降、この島から数多くの出稼ぎ労働者がハワイに渡った。農業などに従事しながら、故郷に残る親族に仕送りを続けた。

 一部の成功者は現地で財を成して帰国し、島に家を新築した。20年余り前に開設された日本ハワイ移民資料館は、そうした家の一つを改装したもの。建築時は今の金額で3億円を要したという豪勢な作りだ。膨大な移民のデータも整備され、数世代を経た日系人がルーツ探しに訪れることも。

 サトウキビの栽培など、現地での労働条件は過酷だった。帰国しても、米国との戦争中には親米の疑いを掛けられ、監視された人々も多かったようだ。それでも、貧しい島から渡った青年たちにとって、異国の文化は長く心に残るものであったに違いない。

 時代や環境は異なるが、日本の繊維産業も海外からの技能実習生に大きく支えられているのが実情。コロナ禍により、帰国できずにストレスを抱える若者も大勢いる。世が落ち着けば、彼ら彼女らの帰国、来日が再開する。経済的なメリットだけでなく、日本の文化や風俗を末永く伝えてくれるだろうか。こういう時期だからこそ、日本人の持つ優しさを忘れずにいたいものだ。



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