《めてみみ》縫製工場の救世主?

2021/08/23 06:24 更新


 医療用ガウン(防護服)は国内の縫製工場にとって〝救世主〟だった。コロナ禍で本業の服作りが激減する中、政府に要請された業界団体を筆頭に、商社など大手企業が窓口(元受け)となり、とてつもなく膨大な量を生産した。ある地方の工場は元受けとなって150万着以上を納品。自社だけでなく地元やそれ以外の工場にも協力してもらって生産した。その結果、防護服特需で前期の業績は通常の10倍まで伸びた。

 東京の小さな工場でも防護服で数千万円の売り上げとなったという話をよく聞く。一時期は検品所にあった修繕用のミシンまでを使って生産しても追いつかないほどだったとも。けた違いの量を生産したため、多くの工場が今年3月まではフル稼働状態。ただし、薄利多売だった。

 その弊害も出ている。単純作業の防護服を大量に生産するのが楽だったので、通常の服作りの技術力が低下してしまったり、多品種小ロットの時間と手間がかかる工程を避けたがる工場が出てきたり。これを機に廃業してしまうところもあった。

 コロナ禍の終息はまだまだ先になりそう。防護服と同様にマスク不足の解消に動いた縫製工場の存在感は際立った。その工場の服作りを持続させるためにも、これからはアパレルメーカーや小売業など発注する側の姿勢が問われることになるだろう。



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