新聞の1面には連日、東京五輪での日本勢の活躍と、新型コロナウイルス感染者数の急増が並んで掲載されている。ファッション業界では、価格は高くても環境問題などを考慮した感度の高い商品が注目される半面、まだまだ低価格商品を製造・販売する仕組みを構築しようとする動きも存在する。
矛盾という言葉が浮かぶ。どんな盾も突き通す矛と、いかなる矛も防ぐ盾を売っていた男が、その矛でその盾を突けばどうなるのかと問われ、答えに困った話。中国の古典『韓非子』にある逸話で、つじつまの合わない事柄を指す。
何とも言えない矛盾を抱えながらも、暑い夏は日々過ぎ、そのうち秋風も吹く。快適な季節が訪れると同時に、ワクチン接種が行きわたって多くの人が街に繰り出す日の到来を期待したい。ここにきて〝リベンジ消費〟という言葉も大きなキーワードに浮かんできた。
とはいえ、リベンジ消費の中身は、コロナ禍以前とは異なるものになるのだろう。従来型の組織や経営手法では乗り切れない時代がすぐそこに迫っていると覚悟せねばならない。矛だ盾だと言い争っている間に、鉄砲や飛行機など異次元の道具や、海の向こうの巨人などが現れ、ファッション業界を席巻してしまうことはないか。アンテナを張り巡らし、国内外の様々な新しい潮流を注視していきたい。