《めてみみ》啓蟄の朝

2021/03/05 06:24 更新


 風にまだ冷たさが残るものの、日差しはすっかり春めいてきた。今日3月5日は暦の上では啓蟄(けいちつ)。冬の間、眠っていた虫たちが土の中から起き出す日とされている。つい先日も、我が家の庭の黄色い花でチョウが羽を休めているのを見つけた。

 もともとファッションは、その土地の気候や文化、季節の移り変わりに由来するものだ。インドで手紡ぎ手織りのカディのような生地が発達したのにも、アメリカ北半球でダウンジャケットが誕生してきたことにも背景がある。デニムのパンツが、ゴールドラッシュに沸く鉱山労働者によって広がったのもそうした事例の一つ。

 20世紀後半から指摘されている地球温暖化は、世界の気候に大きな変化をもたらした。四季のある日本でも、夏の期間が伸びたと言われる。5月から10月までの半年は、夏服にちょっとしたものを足せば事足りる。四季のサイクルの変化は当然、着る服、選ぶ服に影響する。シーズンMDの見直しも必要になる。

 ビーガンレザーなど動物由来ではない素材を使うことで、環境への配慮を訴えるブランドも出てきた。持続可能性などの倫理的な理由もまた、服を選ぶ基準になる。コロナ禍を経た新しい時代を迎える人々にとって、それにふさわしい服や物作りの基準はどうなるのか。古い殻を脱ぎ去るのは楽しみだ。



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