青森県の下北半島を走る機会があった。その太平洋側は原子力発電関連の諸施設が続く。道路沿いには有刺鉄線や監視カメラが張り巡らされ、部外者に対する厳重な警戒が見てとれる。都会ではなかなか感じることの無い雰囲気の道だ。
経済発展を掲げ、電力需要の増加を前提にしながら、こうした諸施設は作られてきた。石油資源がほとんど無い国として、原発の推進は一定の説得力も持った。是非はともかくとして、こうした施設を都会が地方に押し付けてきたことは事実である。
慌ただしいままに、今年も間もなく終わろうとしている。コロナ禍を機に繊維・ファッション産業は大きな曲がり角に立った。それどころか、違う次元に立ったかと感じられる年になった。効率や利益を過度に優先した経営、都心への集中など、従来のビジネスモデルやライフスタイルに対する反省の声が少しずつ高まっている。
つい最近創業したばかりのある企業は、あえて「非効率」や「地方」を会社経営のキーワードにしてきたという。商品は人手、手間暇をかけてアナログ的に作る。価格は、仕事に関わる全ての人が再生産可能なように設定した。幸い、こうした企業姿勢を支持する消費者も増えてきた。マイナスだった要素がプラスに転じる時代。大きく変わっていく潮流を逃さないようにしたい。