タイで7月から反体制デモが続いている。タイでは街中での新型コロナウイルスの新規感染を抑え込んでいるが、コロナ対策の非常事態宣言は毎月延長され、少なくとも11月末までは継続される。これに対して以前から「デモを防ぐため」との見方があった。民主化を求める若者の力を簡単に抑え込めないことは香港の例をみても明らかだ。
14年のクーデターで軍事政権が成立、陸軍大将だったプラユット氏が暫定首相に就いた。民政に移すための昨年の総選挙でプラユット氏が引き続き首相を務めることになったが、軍政下に親軍政権に有利な憲法を制定したことなどが今回のデモの一因になっている。
タイでは王室批判は不敬罪に問われかねないがデモ隊は王室改革も求める。タイ国民が〝国父〟と敬愛したプミポン前国王が亡くなったのが16年。現国王が即位する際、心配する人は多かった。
前国王の時も危機はあった。反政府デモに軍が発砲した92年には、対立する当時の首相と民主化運動のリーダーを王宮に呼び、仲裁した。進出する日系企業などへのデモの影響は軽微で事業や工場の操業に大きな支障は出ていない模様。しかしデモが長引けば、コロナで疲弊する経済にさらにダメージを与える。偉大なる調停者はもういない。今後こうした騒動を誰がどう収めるか。先が見えない。