《めてみみ》作り手の情熱

2020/10/30 06:24 更新


 「『次に作るものは、他社と違う商品を作るのだ』という人間臭い行為にもっと時間を割いてほしい」。本紙10月16日付の瀬川直寛フルカイテン社長との対談で、島精機製作所の島三博社長が語った言葉に共感する。値引き販売率を想定した服作りやMDが、ファッション業界の課題の一つと見ている。

 今月はコート15%、スカート20%など、店頭に投入する商品構成がほぼ決まっている。それを毎シーズン大きく変えることなく前年を踏襲する企業が大半だろう。コートもニットもスカートもと、フルアイテム揃えることが当然で、結果、〝適切な配分〟になってしまう。

 それでも売り上げが伸びているのなら良いが、既存店ベースの前年割れが続く実態がある。正価販売率も向上していない。売れないのは「気温」「同質化」「トレンド変化がない」などの外的要因。前年踏襲型MDなどの内的要因を指摘する声があったとしても、リスクを恐れて無難な方に流れてしまう。

 こんな話もある。「売り」の商品を1型作ったと言うが、生産枚数を聞くと全店舗店分もない。予算枠のためだったが、これでは「売り」ではなく「見せ筋」に過ぎない。前年踏襲の悪弊を断って、アイテム構成や生産型数をゼロから見直すこと。「他社と違う商品を作る」情熱が、未来を作る一歩となるように思う。




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