囲碁から出た格言の一つが「岡目八目」(おかめはちもく)。傍目八目ともいう。対局者よりも、傍らで観戦している人の方が8目先まで見通せるという意味だ。転じて、目先のことで手いっぱいの人に比べ、第三者の方が冷静で正しい判断を下せる時などに用いられる。
囲碁の本家である中国や英語圏にも同様の表現やことわざの類いがあるようだ。いつから日本で使われたのかは判然としないが、江戸時代の川柳にも数多く詠まれていることから古今東西を問わず、人間の知恵として語りつがれてきたのだろう。
将棋なら藤井聡太王位・棋聖、囲碁なら最年少棋士の仲邑菫初段が活躍するなど話題の多い囲碁・将棋界に比べ、繊維業界は暗いニュースが多い。日・週・月ごとの数字に胸をなでおろしたり、心配したりの日々が続く。冬の到来と共にコロナがどうなるのかも不透明。なかなか一歩引いて冷静にというわけにはいかない。
それでも時代は動き、新たなビジネスモデルが生まれてくる。例は少ないが異業種から繊維業界に参入したり、物作りと縁の無い企業が工場を買収するケースも。岡目八目で見れば、やり方次第で成長の可能性が残されている証しなのだろう。負けてはいられない。こちらも異業種に挑戦するくらいの元気を維持せねば。「碁に負けたら将棋で勝て」ともいう。