《めてみみ》一等地の処方箋

2020/09/08 06:24 更新


 8月は百貨店の閉鎖が相次いだ。16日に高島屋港南台店(横浜市)、17日に井筒屋黒崎店(北九州市)、31日にそごう・西武の西武岡崎店(愛知県岡崎市)、同大津店、そごう徳島店、同西神店(神戸市)の4店、中合(福島市)が閉店した。徳島は1月に経営破綻した大沼の山形に続く百貨店の空白県となった。

 地方・郊外店は人口減や顧客の高齢化など商圏の縮小均衡が続く。ここ数年の衣料品不況などの影響で収益悪化が加速し、自力での再生の難しさが改めて浮き彫りになった。定借テナント導入による自営面積の縮小など運営コストの削減に着手したが、構造問題の解決には至っていない。

 新型コロナの影響による業績の悪化は今後、さらに顕著になる。すでに債務超過になった地方百貨店も目立つ。百貨店主力の大手アパレルは大量閉店やブランドの統廃合を進めている。地方百貨店幹部は「売り場の一等地が空きスペースとなってしまった。すぐに後継ブランドに出店してもらうのは難しい」と頭を抱える。

 地方百貨店にとってECなどデジタル化に伴う大規模投資は余力がない。しかし、企業としてでなく、百貨店としての生き残り策は地域との共生にある。一つの処方箋(せん)では解決できないが、コミュニティーや地元で埋もれた産品の掘り起こしなど地域でやり残した課題は多い。



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