《めてみみ》リモートのジレンマ

2020/07/17 06:24 更新


 東京のデザイナーブランドの21年春夏メンズとプレスプリングの展示会が都内で始まった。コロナ禍での自粛期間を経て、本格的なビジネスの再開を感じさせる。パリやミラノでは、デジタルでのコレクション発表が行われているが、やはり実際に服に触れる機会ができると感じ方も違う。

 展示会を取材すると、東京と地方のコロナ禍での温度差を知らされる。「自粛警察」と呼ばれる人たちが、バイヤーの東京出張に苦言を呈するのだそうだ。店としてはオーダーするのにサンプルを直接見たいのはやまやまだが、顧客から自粛を迫られると出張しにくいという。

 ブランドとしては、展示会に来られないバイヤー向けにリモートで接客する体制を整えている。地方の小売店へは日中に、海外へは時差もあるため夜間に対応しているブランドもあった。あるデザイナーブランドは、デジタルコンテンツを充実してルック写真を360度で見られるようにした上で、生地のスワッチもあらかじめバイヤーに送っていた。

 リアルの展示会ならば必要ない細かなフォロー体制が、リモートでの発注には必要になった。それでもバイヤーからすれば、巨額の買い付けをするのに服を直接見られないことはジレンマだ。新しい商談スタイルでいかにビジネスを継続できるか、店側とブランド側の葛藤は続く。



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