《めてみみ》縁の下の力持ち

2020/06/17 06:24 更新


 滋賀県豊郷町、旧中山道沿いに伊藤忠商事や丸紅の創始者である伊藤忠兵衛氏を記念した館がある。旧邸を保存・活用し、愛用の品々、往時の商売や暮らしに関わる資料を揃える。公益財団法人が運営、企業の援助をほぼ受けずに入場無料で一般開放している。

 草創期を支えた八重夫人に脚光が当たっているのも面白い。忠兵衛が大阪進出後も夫人は家を守り、地元商品の仕入れや発送の責を負った。見習い採用の店員の教育の場でもあった。問題を起こす店員があれば八重夫人が預かり、再教育して送り出したという。

 創立時の「紅忠」時代から注目を集めた会社だったようだ。上下関係が厳しく牛肉も高価だった時代に、月6回全店員参加で無礼講のすき焼き会があった。2代目忠兵衛も先進的な人。得意先を効率良く回るために自転車を購入したが、誰一人乗れる者がいない。2代目自らが教官となって指導したエピソードも残る。

 変化を読んだ改革を重ね、今や三菱商事と肩を並べるに至った伊藤忠。繊維カンパニーの強さも群を抜く。ただ、さすがの同社も前年下期からのアパレル不況、新型コロナウイルスの影響による減速感が否めない。新しい時代のビジネスモデルをどう構築するかが急務だ。同社に限らず、縁の下の力持ちを含めて全社のパワーを結集しないと、この難局は乗り切れない。



この記事に関連する記事