引っ越しを機に、本を整理した。持っていた写真集には、ファッションブランドのものも多い。見返してみると、ブランドの写真集はどこか販促の要素を感じさせる。とりわけ、そのブランドのデザイナーが何人も代替わりしていたりすると興ざめしてしまう。
そんな中で面白かったのは、アルベール・エルバスの「ランバン」の写真集(Steidl社12年発行)。シーズンごとのコレクション写真をカタログのように並べたものではなく、物作りの背景にあるスタッフや職人たちの手仕事にフォーカスしている。クローズアップされた職人たちの手やアトリエなどの舞台裏を収めた写真は、エルバスがランバンを去った今となっても決して古くさくはならずに、力強い存在感を放っている。
ファッションは移ろいゆくものであり、変化し続けるもの。時代には逆らえず、最新のものでも、いずれは古いものにされてしまう。しかし、そんなファッションを生み出す人々の労働の持つ価値は普遍的なもの。モノクロでつづられる職人たちの手仕事の写真を見ながら、そんなことを考えた。
新型コロナウイルスが終息した後、人々の価値観はどう変わるのであろうか。変わるものと変わらないもの、変えなくてはならないものと変えてはならないもの。今はそれを考えるべき時間なのかもしれない。