文化や風土の異なる企業の合併は、一方の企業文化が相手のそれを飲み込むことが多い。飲み込まれる側の者にとって、今までなじんでいたものを捨て、新しいものを受け入れることは難しい。折り合いを見いだせず、抗う者は去っていく。
友人が長年勤めた会社を辞めたいとこぼしている。M&A(企業の合併・買収)によって、全く別の企業の子会社となり、それまで作り上げてきた効率的で合理的なシステムが、相手先の合理的とは思えないシステムに置き換わった。その非を説いても伝わらない。相いれない隔たりは、システムの根本にある思想の違いから生まれている。
日本のアパレル企業は生産拠点を求めて東南アジアから南アジアまで活動領域を広げている。バングラデシュなどイスラム圏で工場を運営している企業も多い。毎日、礼拝の時間があり、酒は飲まないし、時期によっては日中、水も飲まない。生活の中でのたくさんの忌避がある。イスラムを生活の基盤に置く国々と日本との違いは大きいが、現地の人たちの力を借りるには、その国の文化の理解が欠かせないと、現地で暮らす日本人は口を揃える。
文化の違いを乗り越えて手を携えるためには、生活や文化の根底に流れる思想を理解し、尊重すること。自社、自国の思想にとらわれていては、協調の輪は広がらない。