数年前。まだSDGs(持続可能な開発目標)という言葉が広く知られていなかった頃、ある戦略立案の最中に私は直面した――衣服の裏側に潜む不都合な真実に。
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日本では年間で80万トンもの大量の衣服が生産されているが、その一方で廃棄される衣服も50万トンにも及ぶ。つまり、作られている量に迫るほどの衣服が捨てられているのだ。
その過程で排出される膨大な温室効果ガスは地球の温度を狂わせ、命をむしばみ、未来を静かに奪っていく。そしてこの破壊の連鎖に、他でもない私が愛し信じてきた「衣服」が関わっている。その事実に私は深い痛みと危機感を覚えた。
本来、人生を彩り幸福をもたらすはずの衣服が、皮肉にも未来の不幸を生む種となっている。それはあまりにも矛盾に満ち、あまりにも悲しい現実だった。
なぜ衣服は幸福の象徴から破壊の象徴へと変わってしまったのか。答えは明白だ。
大量生産・大量消費――効率を最優先とするこの構造が地球の声に耳を貸すことなく、ひたすら暴走してきたからである。
だが私はまだ諦めていない。衣服は本来、希望をまとい世界を美しく変える力を秘めている。だからこそ私は問い直す。
この地球と愛する衣服。その両方を未来に残すために私たちは今、何を選ぶべきなのか。その答えは次の完結編で語ることにしよう。
(福助代表取締役社長 坂本友哉)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。