《めてみみ》たくましさと危機感と

2019/07/04 06:24 更新


 香港市民が再び決起した。中国への犯罪容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回を求めるデモだ。あまりの規模に香港政府は改正案の廃案を表明したが収まらない。デモ参加者の一部は改正案の即時撤回などを求め1日、立法会(議会)に突入した。

 97年7月1日、香港は英国から中国に返還された。中国でありながら返還後50年間は「高度な自治」を認める「一国二制度」が採用されたが返還から20年以上が経ち政治、経済の両面で中国の影響が強まっている。

 14年には民主化要求デモ「雨傘運動」が起こり若者たちが街頭を占拠。デモが長引くと市民の心は徐々に離れ、要求した行政長官選挙の民主化は実現しなかった。「やはり中国に抗っても仕方がない」という香港人には、無力感がにじんでいた。これを思い出すと、今回のデモで同改正案を廃案に追い込んだことに、香港人のたくましさと強い危機感を感じる。

 仏で起こった「黄色いベスト運動」ではパリ中心部の高級ブランド店のオーナーが「商売にならない」と嘆いていた。雨傘運動の時もデモの長期化が市民生活に影響を及ぼし、その後香港経済は16年まで低迷した。これ以上の長期化は雨傘運動の二の舞になりかねない。落としどころを見定めてどう終結させるか。再び無力感が残る終わり方はして欲しくない。



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