プレゼントの定番に、刺繍や刻印で名前などを記したカスタマイズ商品がある。名入れのハンカチやボールペン、最近はイニシャル入りのリップバームもよく見る。私自身も友人やお世話になった人へのギフトとして、何度もオーダーしてきた。
ハンカチの場合、贈る人のことを想像しながら布を決め、イニシャルの色やフォントを決める。時にはありがとうの言葉を刺繍で入れたり、記念日の日付を記したり。ひと手間加えることで、世界に一つだけの贈り物となる。
友人からの結婚祝いもそんな一品だった。夫婦の干支(えと)を左右それぞれに描いた鼻緒。淡い青の生地に、金と白の動物たちが神々しく描かれていた。繊細なハンドペイントで知られるデザイナー藤井陽介さんが、お守りになるように描いてくれた。畳表の草履の台にすげて、友人とデザイナーによるあつらえの品が完成した。
カスタマイズするときに相手のことを考える時間が、特別な価値を生む。何でもある時代だからこそ、なおさらだ。そういう時間が受け取る側のかけがえのない喜びとなり、送る側にとっても大切な体験となる。
近年、名入れをはじめとするカスタマイズサービスが盛況なのも、そういった体験を求める人が多いからだろう。せっかく使うものだから、大切に思いながら手に取りたい。そういう気持ちに価値がある。