いまだ店舗閉鎖が続き、明るい未来を描き切れていない百貨店業界。そんななか、近鉄百貨店が18年度、12年ぶりに復配した。19年度も同額の一株20円の配当を予定する。「一定の道筋をつけることができた」と高松啓二社長。自身は代表取締役会長に、秋田拓士代表取締役専務執行役員が社長になる人事を発表した。
高松社長とともに事業構造改革を進めてきた秋田氏が、記者会見でこれまでの仕事について語った。まず行ったのが「社員の意識改革」という。売上高ベースから収支管理の徹底による利益重視の事業モデルに転換し、「赤字ユニット」を入れ替えてきた。
インバウンド(訪日外国人)対応では、約130社まで広がった海外エージェントとの提携で「追い風」を呼び込んだ。郊外型店舗では「客数を伸ばす戦略」で食品の改装を進めてきた。定期借家契約で大型専門店を導入する一方、FC契約店に社員を配して「人件費コストが上がらない構造」で店舗活性化策に取り組んでいる。
こうした多層的な構造改革が復配に結びついている。今後は、低調なファッションフロアを中心とする中層階を改装する予定だ。キーワードは「スクランブル」という。「従来の百貨店事業モデルは限界に近づいている」との認識から取り組んでいる「事業創造とイノベーション」に期待したい。