地方百貨店の今春の改装を調べてみると、化粧品売り場を増床、リニューアルする店舗が多かった。食品と並ぶ強みの商品領域を強化し、次世代の新規顧客を獲得する狙いだ。都心で相次いだ化粧品領域の拡大が地方にも広がったといえる。
伸びている商品領域である化粧品を拡大し、不振を極める衣料品を縮小するのが経営の常道であることは分かる。しかし、顧客の後追いをしていれば、いつかは離反が起こる。90年代に衣料品売り場を拡大し、結果的に売り場の同質化が進んだ。現在も衣料品頼りの収益構造から脱し切れていない。
この間の化粧品売り場の増床・改装はその教訓から学んでいるのか大いに疑問が残る。かつて百貨店は進取の精神で、常に新しいことに挑戦し、消費文化の育成、発展を担ってきた。現在の小売業の仕組みやサービスの原型は百貨店が作り出してきた。多くの顧客に支持されてきたのは、常に消費者ニーズを先取りしたからだ。
目先の売り上げや効率ばかりを追うのではなく、もっと本質を見つめ直すべきだ。衣料品の冬の時代だからこそ、改めて若手デザイナーや生産者のインキュベーターとしての役割が問われる。商品、サービスを深掘りしたスペシャリティーストアとして、時代やライフスタイルの先を顧客に示さなければ百貨店の存在意義はない。