《めてみみ》「価値創造費」

2019/02/08 06:24 更新


 「楽しさナンバーワン百貨店が我々のアイデンティティーと決めました」と阪急阪神百貨店の荒木直也社長。情報リテーラーや劇場型百貨店など、目指すべき百貨店像を表現してきたが、これが最も腹落ちする言葉だという。個客が求める楽しさの提供を「全店に共通する価値提案」に位置付けた。

 「最後にモノを買ってもらうことで、それぞれの楽しみが完結するのが百貨店」とも。ブランドの集積力、イベントの集客力といったコトやモノの〝単発〟の力だけでなく、購入に至るストーリーを描き、モノにつなげていく演出までを主体的に総合プロデュースする考えだ。これにより小売業としての百貨店価値を高める。

 百貨店業界の18年の売上高は0.8%減の5兆8870億円。インバウンド(訪日外国人)のプラス要因はあるが、減収基調に歯止めが掛からない。カテゴリーキラーやSC、ECとの競合の激化もあるが、コスト構造改革に伴う閉店や売り場面積の減少が続いている点も要因だ。

 阪急うめだ本店は継続的な改装投資で、13年度からの5年間で500億円ほど売上高を積み上げた。さらなる増収を計画し、改装投資を続ける。19年度からは管理会計項目として「価値創造費」も設ける。未来を創造するための経費の位置付けだ。「削る」ばかりでは、明るい未来を描くことは困難だ。



この記事に関連する記事