『僕たちはガンダムのジムである』(常見陽平著、日経ビジネス人文庫)を、ファッション業界の新入社員の皆さんにぜひ読んでもらいたい。テレビアニメ「機動戦士ガンダム」を知らない若い世代に説明すると、ジムは地球連邦軍の量産型モビルスーツで、性能は悪くないが突出して良いわけでもない。主役のガンダムの引き立て役で、敵のザクよりも目立たない存在なのだ。
大学や就職活動でエリートコースを歩んできた人ほど、自分が会社の主人公と勘違いし、アムロやライバルのシャアの姿と重ね合わせ、自分は秘められたすごい才能を持った「ニュータイプ」だと思いがちだ。「すごい人」=ガンダムにならなければいけない病にかかり、自分探し・磨きに余念がないという。
リクルート出身で人材コンサルタント会社を経て、大学で専任講師を務める著者は、「働き方改革」が叫ばれて久しいが、ほとんどが「働かせ方」の模索になっていると指摘。世の中は普通の人で動いており、普通の人のための、普通の働き方を作らなければならないと主張する。
まずは、やりたいことにこだわらない。やらされた仕事があなたを強くする。ルーチンワークは頭とハートとフットワークが必要な深いもの。この明示に大いに納得させられる。地道に働く会社員=ジムにこそ未来は開けるはず。