30年来の付き合いになる同僚がいる。腐れ縁の彼はバブル真っ盛りの大学時代、よくブランド物を着ていた。社会人になってからも高いスーツを買っていた。最近は年を重ねたせいか、すっかり服に頓着しなくなっていた。
その同僚と先日、雑談していると、近頃また良い服が欲しくなってきたという。少し前まで安い服でもよかったが、それでは愛着がわかないのだそうだ。
昔買って、破れては修理してずっとはいていた、数万円したジーンズに限界が来たのがきっかけらしい。今どきジーンズなど数千円で買えるが、新調するなら、20年以上はき続けたのと同じくらい大事にできるものが欲しいというわけだ。
良品計画の18年2月期は増収増益だった。衣服を中心に商品価格を引き下げたことが一因だ。ファーストリテイリングも今上期がユニクロの国内外の伸びで増収増益だった。デイリーに使う日用品や服は、一定の品質で、手頃に買える商品が市場の主流になっていることを裏付ける。
2社のどちらかで新しいのを買えば、と言っても、あるいはまたハイブランドのを買えば、と提案しても、同僚は首を縦に振らなかった。かつて着る物にこだわり、その後気にしなくなった大人が、もう一度買いたくなる服。それは、二極化が常態化した市場に生じた隙間かもしれない。