香港と中国・深圳との境界近くの地上69階のビルから眺めると、足元の高層ビル群と向こう側には田んぼや山が広がる。対照的な風景で、手前のビル群が深圳サイドだ。
深圳のGDP(域内総生産)が17年、初めて香港を上回り逆転した。香港の実質経済成長率は3・8%で深圳市は8・8%だった。深圳はファーウェイやテンセント、ドローンのDJIなど世界を代表する企業を輩出し、大都市に成長した。
香港中心部から深圳まで電車でわずか40分。今年の夏ごろには広州~香港間の新幹線が開通し、香港~深圳間は20分とさらに近くなる。香港を訪れる中国人観光客がさらに増えそうだ。
香港には66年設立の日本人学校がある。その日本人学校は3月末、中学部を小学部の校舎に移し、4月から小・中学部を統合する。「日本人の子供が減り、香港の高い固定費では学校を維持するのも大変」と駐在員が残念がる。家賃が高い香港から深圳に居を移し、深圳から香港に通う日本人が増えているそうだ。
香港に進出した日系企業で、深圳を取り込めているところはまだ少ない。そういえば、伊藤忠商事の岡藤正広社長は「商社は世界経済をリードする企業と接点を持てていない」と嘆いていた。香港での大きな成長は難しくても、すぐ隣に急速に発展する大市場が生まれている。手をこまねいている場合ではない。