「ECサイトのリコメンド情報にはない機能がリアル店にはある」と老舗書店、有隣堂の松信裕社長。ECサイトで欲しい商品を閲覧したり、購入したりすると、そのユーザーや同様の商品を購入した客のデータをもとに、「この商品を購入した人はこんな商品も買っています」などサイトが薦めてくる。リコメンド情報をもとに、購買する消費者は多い。
ただし、リコメンド情報で発信される商品は閲覧・購入した商品と同様のジャンルだ。全く別のジャンルの商品を薦める機能はない。「人間の興味の範囲はもっと広いはず。ここにECサイトは対応できていない」と松信社長は話す。
松信社長によると、「本屋に来店するお客の半分以上は売り場の棚を見て、『この本は面白そうだな』と思って買っていく」という。「目的とは全く違う本に出会える。これがリアルな本屋の魅力で、ECにはない強み」と強調する。
ECや電子書籍の拡大に加え、若者を中心に「本離れ」が進み、書店を取り巻く環境はますます厳しい。その中で、書店が生き残るためには「その店の提案力を示す棚の編集力を上げることが不可欠」という。その前提となるのが「お客にこんな本を薦めたいという店員の思いと創造力」だ。ファッションビジネスも同様。客に新しい発見と感動を与える売り場作りと接客が求められている。