大型ショッピングモールの中を抜けて自宅に帰る。十数年前にできた百貨店、専門店街、スーパーマーケットの複合店舗で、オープン当時は大きな話題になった。その後、環境の激変を背景に、特に専門店街は相当に入れ替わった。あるテナントが消え百円均一ショップが入居、来店客の多さに低価格志向の根強さを改めて思う。
この夏、モールを構成していた百貨店が撤退した。3カ月余りシャッターは降りたまま。少しぜいたくする日は百貨店で、デイリーの買い物はスーパーと、すみ分けていた消費者が多かったはず。空いた場所を埋める構想も進んでいるようだが、一つの核が無くなるとモール全体の魅力が一気に落ちていく。
米国の流通をウォッチしてきたあるアパレルメーカーの社長は、「ECの伸長を背景に、米国ではこうした流れが加速し、〝幽霊モール〟が次々と出現している」と警鐘を鳴らす。荒れ果てたモールの写真を見ると、まさに幽霊という言葉が当てはまる。一つのモールの閉鎖で、どれほどの雇用が失われたことだろう。
地理の違いもあり、日本がそのまま米国の歴史をたどるとは思えないが、大きな流れはそう簡単に変わるまい。話してくれたアパレルメーカーも今秋、そのモールの店を閉じた。杞憂(きゆう)に終われば幸いだが、大変な時代の足音が着実に近づいている。