《めてみみ》両刃の剣

2017/11/07 04:00 更新


 百貨店市場の急速な縮小の象徴となるのが、三越伊勢丹の早期退職制度の改定だ。早期退職者に支払う退職金を増額する。08年4月の経営統合以来、地域事業会社を除いて大規模な人員削減に着手してこなかっただけに衝撃が大きかった。

 10月20日に社員に開示した内部資料によると、早期退職の対象を現行50歳以上であるステージA(部長職)から48歳に引き下げ、48~49歳の割増金を5000万円に設定した。割り増しの最大は48~50歳の5000万円となり、通常の退職金と合わせて約7000万円が支給されることになる。48~49歳のステージB(課長職)でも2倍の割増金が加算される。

 三越伊勢丹の売上高人件費比率は8.5%で、同業他社に比べて高い。割増退職金を手厚くして早期退職を促し、人件費を削減する狙いだ。「人数や期間を決めて希望退職を募ることはしない。自然減と採用抑制で対応する」(杉江俊彦社長)とリストラによる肩たたきでないことを強調する。

 実際、今回の見直しは「単年度限定でない」。中長期的に維持できる水準という。ただ、早期退職者が想定を上回れば、加算額を一定水準に下げることになるだろう。懸念されるのは営業や販売での有能な人材の草刈り場となることだ。経費削減と人材の外部流出は両刃(もろば)の剣となることを忘れてはならない。



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