《めてみみ》提供する側の信念

2017/08/07 04:00 更新


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「洋服だけがファッションと言えない時代。生活者は美容や健康、食、コミュニケーションへの投資意欲の方が強くなった」と、ユナイテッドアローズクリエイティブディレクション担当上級顧問の栗野宏文氏。先日、日本メンズファッション協会(MFU)の講演でファッション業界の現状を分析し、今後のビジョンを提起した。

 ビジネス環境が激変するなか、栗野氏は業界に必要なこととして「モノ自体の魅力を磨き上げることと、小売りなど提供する側が信念を持って伝えることに尽きる」と話す。服が売れない言い訳ばかりこぼしていても、何も始まらない。この意見に記者も同感した。

 普段、新興メンズブランドを取材していると、真摯(しんし)な物作りやクセの強いクリエイションによって、一般的には無名な存在でもコアなファンを獲得していることが多い。地方の個店でも、個性的で熱量の高いオーナーを信頼して顧客が集まり、コミュニティー化している店に出会うとうれしくなる。脱大量生産・消費で特定の少数を狙ったブランドやショップに、満足を求める生活者が少しずつ増えてきているのだろう。

 モノを売り買いするだけなら便利なツールはいくらでもある。「ファッションはカルチャー」(栗野氏)だからこそ、その楽しさや価値をリアルに伝え続けることが、改めて求められる。



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