ふかじ先生のWEBマーケティング教室⑤(深地雅也)

2018/06/11 06:29 更新


Jirapong Manustrong / Shutterstock.com

Webの集客って具体的にどうしたらいいの?②

前回は集客施策として、SEO対策とそれにまつわるコンテンツマーケティングについて解説しました。

*ふかじ先生の過去ブログはこちら

今回は集客施策第二回目、ソーシャルメディアを使った集客について解説していきたいと思います。


○ソーシャルって何から始めるの?Twitter・Facebook・Instagram…、全部やるべき?

ソーシャルと一口に言ってもそのツールは様々。しかもツールごとに投稿する内容やユーザー属性も違うから、普段から触ってなければ何が何だかわかりません。僕も仕事柄、一通りは触りますがやってて「面白くないな…。」と思うツールもあったりします(おじさんにはInstagramの楽しさがわからないのです笑)。ですからまず考えなければならない事の一つ目は、

「自社のブランドはどのソーシャルを優先して使えばいいのか?」

という事です。ファッション関連であれば商品特性上、ほとんどのケースにおいてInstagram活用が必須になるんでしょうけど、ブランドの段階や属性によってはその他のソーシャルも十分使えます。

弊社のクライアントでもユーザー属性は様々ですが、例えば30~40代男性がメインのブランドであればFacebookのエンゲージメント(※1)が非常に高く、コンテンツを更新したらサイトへの流入が大幅に伸びます。そして逆にInstagramで頻繁に投稿してもソーシャル上のインプレッション(※2)は伸びるもののサイトへの流入はあまり増えず、エンゲージメントも低かったり。

※1エンゲージメント…アカウントの投稿に対してユーザーがどれくらいの反応や行動を起こしたかの指標。(ライク、コメント、リンクのクリック、リツイートなどなど)

※2インプレッション…ユーザーに表示された回数

BigTunaOnline / Shutterstock.com

しかし一方でレディースブランドではInstagramはブランディングや集客装置として大いに使えます。おまけに購買意欲の高いユーザーも他のソーシャルと比較すると多数います。これくらいユーザー属性によっては差が出てしまいます。

ラグジュアリーブランドでは、ユーザーとのタッチポイントを強化すべく、ほとんどのツールに手を出しています。Twitter、Facebook、Instagramは当たり前で、それ以外にもYouTubeやpinterest、国によってはsnapchatやwechatまで網羅してたり。潤沢な資金と人的リソースが十分であるならタッチポイントを強化し、ソーシャルメディアでユーザーとのコミュニケーションを積極的に取り、カスタマーサポートまでカバーする事は必要かと思います。

しかし、先ほども言いましたがソーシャルメディアはブランドのユーザー属性によってエンゲージメントが大きく変わりますから、費用対効果を考えてあえて「使わない」ツールを選択するのもまた必要な事ではあります。

極端な話、10代メインのブランドでFacebookを活用しても見る人がほとんどいないでしょうから。ごく一部の話になりますが、僕の周りの学生さん達は一応Facebookアカウントを持っています。しかしほとんど見ていません。なぜなら、様々なサービスで使われる「ソーシャルログイン」で活用できるからというのが理由だからです。


○投稿する内容は?あまり効果があるようには見えないんだけど…。

では具体的に何を投稿するのか?ですが、これもブランドの色によって大きく変わってきます。実はちゃんとした投稿の指標は既にどのブランドにもあるのです。というか無いとブランドビジネスとしておかしいです。それが第一回からお話している「コンセプト」になります。

ブランドコンセプトに沿ったコンテンツをソーシャル上で投稿する事により、ユーザーにどんな「ブランドとして認知してもらいたいか?」を実現していく。ユーザーとの全てのタッチポイントにてブランドのコセプト・世界観を伝えていく努力が必要なのです。

僕が今個人的に注目しているのは「アトリエベトン」というブランドですが、こちらはまずコンセプトが”健全な引きこもり”に向けたブランド。

<ABOUT> ATELIER BÉTON では、洋服は生活を快適にする「暮らしの道具」と考え、家の中でのライフワークに寄り添うプロダクトを、新しい感覚でクリエイトしていきます。シンプルで工業的なデザインの中に、日常の所作を楽しめる機能を取り入れ、ルームウェアを超えたホームウェアとして展開していきます。

で、そんなブランドのInstagram見てみると、

やっぱり全部室内なんです。引きこもりなんだから当然ですが、どんなブランドイメージなのかが非常に明確だしコンセプトも尖ってるから認知されやすい。むしろコンセプトが尖っているとソーシャル活用がやりやすいとも言えます。コンセプト・ブランドイメージをヴィジュアルに落とし込んでユーザーに訴求するツールとしてはInstagramは最適だと言えます。

そして投稿内容をブレずにかっちり決めたいのであれば下記のような事例も。

https://www.instagram.com/moussyofficial/?hl=ja

https://www.instagram.com/moussysnap/

https://www.instagram.com/moussystudiowear/

https://www.instagram.com/moussyglobal/

バロックジャパンリミテッドの運営するブランド「moussy(マウジー)」では、投稿する内容に応じてアカウントを使い分けるという徹底ぶり。本体のアカウント以外に「スナップ」「別ライン」「海外向け」と使い分けているようです。ブランドが拡大してくるにつれて投稿するネタの幅が広がってくると、投稿にブレがあるように見えがちです。アカウントの「色」をブレさせない為にも使い分けが必要になる場合もあるでしょう。


こういう事を繰り返し投稿していく事でブランド価値が適切に積み上がっていきます。これは何もソーシャルだけのお話ではなく、ユーザーとのコミュニケーションをコツコツと実行していくのはブランドビジネスとしては当然の事です。それが今の時代だとソーシャル「も」必要になっただけの話。

しかし多くのブランドで見られる事ですが、ソーシャルメディアを運用する事が目的化しています。ソーシャルはあくまでユーザーとコミュニケーションを取る為の手段であり、何を投稿するかが重要なのです。目的と手段が入れ替わってしまっているからこそ、上手く活用できていないブランドが多数存在するのです。

過去から長く続いているブランドであればファンは一定数いますし、ソーシャルのアカウントを作ればフォロワーはすぐ増えます。しかしそれは現時点でのファンを可視化した数値なので有効活用しているかと言われるとまた別の話です。

今の数値に満足せず、そこからシェアを生み出す施策を立案する事が常に求められます。まずは自ブランドが何を伝えたいかを明確化し、それがユーザーに刺さっているかの検証をする。それこそがブランドが強固なファン作りをする為に必要なソーシャル施策なんです。


○運用したらすぐ売れるの?

もう一つの問題点としては、ソーシャルってやっても中々効果が見えにくいという点です。いや効果はすぐ現れるんですが、効果を「売上」と捉えるとすぐに反映されるのは難しい。これによって心が折れそうな担当者もたくさんいる事でしょう。

上層部がそこに理解があるならブランドとして積極的に活用していけるのでしょうけど、組織では必ず費用対効果が求められます。「インプレッション」「リーチ」(※3)「エンゲージメント」など、ソーシャルにまつわる専門用語で効果を検証する事は可能ですが、

※3リーチ…投稿が届いたユーザー数

「運用した結果、どれくらい売れるのか?」

と売上ベースで計り出すと、始めたばかりでは結果なんてほとんど出ないでしょう。そして、ソーシャルをweb上だけで完結するものと考えていると更にファン獲得が難しくなります。認知拡大するツールとしてwebは非常に機能しやすいものですが、そこから興味関心を持ってもらうのはリアルな場の方がはるかに簡単です。


具体的には、ポップアップショップや店舗で商品を購入してもらったお客にソーシャルのアカウントを積極的に認知してもらう事が求められます。

そしてリアルの場で商品を購入してもらうだけでお客がブランドを認知していると思ったら大間違いです。たまたまそこを通りかかった人、その商業施設が好きな人など、自ブランドを認知していなくても物が売れるケースはざらにあります。

だからこそまずはリアルでファンを獲得し、ソーシャルを絡めて育てていくのです。「ショールーミング」や「ウェブルーミング」と呼ばれるお客の動きがありますが、webから店頭に送客する、また逆に店頭からwebに送客するのはお客を育てていく過程では当然の動きだと言えるのです。

もしweb上だけ、ソーシャルだけですぐに結果を出したいのなら、コンセプトや世界観、更新するコンテンツをバズりやすいものとして設計しなくてはいけませんので、根幹から変える必要が出てきます。

どちらにせよブランディング施策がすぐに効果を確認できないのと同様に、スタートしたばかりのブランドのソーシャル戦略も数年単位で効果を検証しなければ売上ベースでの費用対効果を計る事は難しく、それが出来ない組織ならやらない方がマシかもしれません。

ブランドがECを強化する理由って、ユーザーの購買行動の変化が一番の理由です。ソーシャル運用もそれと同様で、ユーザーの生活圏がリアルだけでなくwebに移行しているのですから活用するのは当たり前なんです。


企業の上層部の方々は未だにソーシャルを触った事が無い人もたくさんいるでしょう。自分自身がツールを触らずしてそれが有効かどうかをどうやって判断するのでしょうか。まずはご自身でソーシャルを触ってみて、ECで商品を購入してみる。

リアル店舗でも同様に市場調査をし、商品を購買してみて初めて消費者の気持ちって理解できてくるでしょう。それと全く同じで、webを、ECを、そしてソーシャルを全く触らないのにその重要性やカスタマージャーニーが理解できる訳が無いのです。

では、本日はここまで。次回はソーシャル運用の応用編。巷でよくお話されているインフルエンサーマーケティングについて解説していきたいと思います。

しっかり復習しておいてくださいね。

ふかじ・まさや ラグジュアリーブランドのリテール管理と全国セレクトショップへのホールセール担当を経て、起業。高級衣料品、ミセス、ヤングカジュアル、などの経験を基に、ファッションに特化したECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を展開。スタートアップブランドの支援を中心に活動。その傍ら、服飾専門学校の講師も務める



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