東京都と繊維ファッション産学協議会は、14年にスタートした「トーキョー・ファッション・アワード」より一段進んだデザイナーの海外進出支援として、「ファッションプライズオブトーキョー」(FPT)を創設。第1回は「マメ」の黒河内真衣子が受賞した。支援のもと18~19年秋冬、19年春夏のパリ・コレクションと、アマゾン・ファッション・ウィーク東京18年秋冬でショーかインスタレーションを行う。
(五十君花実)
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――市況が厳しい中での挑戦だが、FPT応募の経緯は。
15年春夏から自社でパリ展を開始し、16年春夏からはショールームと組んでニューヨーク展も行ってきた。海外バイヤーからなぜショーをしないのかと聞かれる機会が増え、ビジネスの中の一つの選択肢として、ショーが必要な時期ではないかと感じるようになった。
海外市場の冷え込みは理解している。でも、ブランド開始直後の国内市場も、東日本大震災などで厳しかった。国内外ともに、経済状況が変化する中でブランドを継続する難しさは感じているが、会社として着実に成長してきた。それは工場や卸し先、お客様など、周りの人々のおかげだ。
単に売り上げを伸ばすためだけではなく、今後どんな状況下でもブランドを続けていくために、ブランドの核となる精神力を強化しなければならないと思っている。その一つの形がショーであり、パリでのショーが最終目標ではない。お客様と共にブランドを継続していくことの方が、我々には重要だ。
――海外と国内のバイヤーでは、求めるものが違うのでは。
当初は売れるものが国内外で違ったが、最近は国内の地方店なども、強いピースを好むようになってきた。店がマメを大事にしてくれているからこそだと思うが、多少高くても、シーズン性の高いものが売れる。ショーをすることで、さらに強い服ばかりになるのではと不安に感じる店もあるかもしれないが、自分が着られないものを作る気はないし、物作りのスタンスは変わらない。
毎シーズン、スタッフで手分けしてできるだけ産地工場を回り、新しいアイデアを集めている。毎回新しい発見があり、勉強になる。こういう時間をこれまで以上に大切にして、物作りを強化していきたい。
――今後のブランド像は。
具体的に、どのブランドみたいになりたい、どんな規模にしたいという像はない。我々は、ものがあふれる中でも新しいものを作り、それを残していきたいと思っている。未来像を常に自分自身で選択できるようにはしていたい。
設立して7年。当初想像したスピードよりも成長は早かった。厳しい時代の中で、それはとても光栄なことであり、周りの人に恵まれたからできたこと。期待は感じるが、焦らず気負わず、自分らしく進めていきたい。