パリ、マレ地区の魅力(宮沢香奈)

2016/07/27 11:24 更新




パリには、通貨がまだぎりぎりフランだった頃に一度だけ仕事で訪れたきりだった。もうどこを歩いたのか、何区にいたのかも覚えていない。正直、”あまり良い思い出がなかった。”というのがパリの第一印象である。

そんなパリへ、移住2年目にして、十数年振りに行くことになったのは、郊外で開催されたパリ最大級のテクノフェスティバル”WEATHER FES”の取材のためだった。ベルリンからオルリー空港まで2時間弱、あっさり着いたパリの街並みはコンパクトにぎゅっと可愛らしく、そして美しくまとまっていた。

  



 ヨーロッパ独特の中世的な建築や街並に感動することは、さすがにもうないけれど、何より人の優しさに感動と驚きを覚えた。

ほとんどの人が英語で対応してくれ、嫌味のない笑顔までついてくる。ほとんど消え失せている昔の記憶にも、冷たくされた覚えはあれど、優しくされた記憶はなかったため、凹むほどの悪天候の中でも人々の温かさにかなり救われた。

そう、私たちがパリに着いた日は、世界的ニュースになるほどの大洪水の直後で、翌日からストライキまで発生するという前代未聞の事態だった。パリの友人からは「すごい時に来たね!」と苦笑いされるほどで、すぐ隣なのにベルリンより10℃も低い気温という正直帰りたいと思ったほど。

しかし、辛かったのは最初だけで、後半は天気にも恵まれ、ストライキが起こっていてもさすがは大都会、地下鉄やバスが便利で、土地勘のある友人のアテンドのおかげで、さほどストレスを感じることなく、移動も取材も無事に終えることが出来た。

フェス取材がメインだったため、観光はそれほど出来ていないが、それでもやはりマレ地区周辺は歩いているだけでも魅力的だった。

 


 

ここは、アポイント制のヴィンテージショップ「Brut Clothing」。

PRとしてお世話になっている音楽レーベルmule musiqのボス、河崎氏がちょうど同じタイミングでパリに来ていて、食事の前に連れて行ってもらった貴重な場所。

 


 

店舗のある場所もかなり貴重で、古い屋敷の地下壕かワインセラーのような場所にひっそりあるまさに隠れ家。フレンチワークウェアやヨーロッパミリタリーを専門に取り扱っており、状態、センスともにとても良い。

残念ながら行った時には、レディースは少なめだったけれど、30年代、50年代のジャケットがステキで、メンズもサイズが合えば欲しいと思うものがいくつもあった。バイク好きの若いオーナーもとても感じが良く、次は、きちんと時間を作り、改めて取材で訪れたいと思った。

 


ここは、大人気のビストロ「Au Passage」。知らない土地では、やはり知っている人に連れて行ってもらうのが一番。

食のパリと言えど、外観がオシャレで、高いだけで美味しくないところも多いと聞く中、ここはワインも料理も全部おいしい。口の中で溶けるような優しい食感と繊細な味を久しぶりに味わうことが出来た(美味しいワインと話に夢中で写真を撮り忘れました…)。

すっかり物欲より、食欲に走り出したパリの旅はまだまだ続く。



宮沢香奈 セレクトショップのプレス、ブランドのディレクションなどの経験を経て、04年よりインディペンデントなPR事業をスタートさせる。 国内外のブランドプレスとクラブイベントや大型フェス、レーベルなどの音楽PR二本を軸にフリーランスとして奮闘中。 また、フリーライターとして、ファッションや音楽、アートなどカルチャーをメインとした執筆活動を行っている。 カルチャーwebマガジンQeticにて連載コラムを執筆するほか、取材や撮影時のインタビュアー、コーディネーターも担う。 近年では、ベルリンのローカル情報やアムステルダム最大級のダンスミュージックフェスADE2013の現地取材を行うなど、海外へと活動の場を広げている。12年に初めて行ったベルリンに運命的なものを感じ、14 年6月より移住。



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