Tillmansの世界とモダン建築(宮沢香奈)

2016/02/02 17:45 更新




ベルリン随一のクラブPanorama Barの壁に飾られた大きな一枚の写真が目に焼き付いて離れなかった。絶対撮影禁止のクラブに展示されている作品なため、どんな写真なのかはここでも触れることはしない。実際に足を運んでみて欲しい。一度見たら忘れられない。それが、世界的写真家Wolfgang

Tillmansの作品なのだと思う。

 

 


 

 昨年末の話になるが、ベルリンのHaus der Kulturen der Welt(以下、HKW)でティルマンスのトークショーが開催された。ハッセルブラッド国際写真賞を受賞した作品集『What’s

Wrong With Redistribution?』の記念イベントとして、ティルマンス本人も登壇し、関係者と共に制作や作品にまつわる話を数時間語り、終了後には作品集の販売、DJを入れたアフターパーティーが行われた。

ステージ上のスクリーンに作品が映し出され、それについて本人や関係者が説明していくのだが、一人を除いて全てドイツ語だったため、さっぱり分からない。ドイツ語の分かる友人を連れて行くべきだったととても後悔した。

作品集の内容は、2005年から始めた「Truth Study Center」というプロジェクトで制作したものが、説明と共に収められており、自身がデザインした木製テーブルの上に写真プリント、新聞、雑誌、広告などの印刷物を配置したり、重ねたりして作られたコラージュ作品がメインとなっている。

中には日本語の広告もあって興味深かった。漢字やカタカナが使われている日本のポスターや雑誌の見出しは、日本人の私から見てもとてもアート的だと思う。


  

残念ながらトークの内容をその場で理解することは出来なかったけれど、何より会場がステキで、写真を撮るのに夢中になった。文化遺産となりうるドイツの古い建築物も好きだが、芸術的な美しさを持つモダン建築はそこにいるだけで気持ちが高揚するのが分かる。

さらには、来場者にはオシャレな人が多かった。全身ブラックで統一されているのはもうベルリンにおいては当たり前となっているが、そこにインテリジェンスとエレガンスが組み合わさり、ローカルクラブや小さなギャラリーではあまり見ない大人の雰囲気が漂っていた。

 

 

  

HKWは1989年に設立され、2007年にアメリカ人建築家ヒュー・スタビンスによって全面改修され、現在のデザインへ。ヨーロッパの最先端コンテンポラリーアートをメインとした展示やインスタレーション、コンサート、カンファレンスなどを行っている施設として世界から注目を集めている。

有名な建築家が溢れているドイツにおいて、アメリカ人建築家を起用している意図はよく分からないけれど、ここは外観を見るだけでも価値がある。広々とした土地に存在する斬新なカーブを描く巨大な立体アートは圧巻の美しさである。

 

 

 

マンスリースケジュールを見たら興味深い展示や催しが多数やっているようなので、またじっくり時間をかけて来たい場所の一つとなった。



宮沢香奈 セレクトショップのプレス、ブランドのディレクションなどの経験を経て、04年よりインディペンデントなPR事業をスタートさせる。 国内外のブランドプレスとクラブイベントや大型フェス、レーベルなどの音楽PR二本を軸にフリーランスとして奮闘中。 また、フリーライターとして、ファッションや音楽、アートなどカルチャーをメインとした執筆活動を行っている。 カルチャーwebマガジンQeticにて連載コラムを執筆するほか、取材や撮影時のインタビュアー、コーディネーターも担う。 近年では、ベルリンのローカル情報やアムステルダム最大級のダンスミュージックフェスADE2013の現地取材を行うなど、海外へと活動の場を広げている。12年に初めて行ったベルリンに運命的なものを感じ、14 年6月より移住。



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