ロールプレイング大会について感じること(藤永幸一)

2014/08/30 00:00 更新


ロールプレイング大会については、賛否両論いろいろあります。

 


 

良く聞くのが、基本レベルを重視するか、個性派を優先するかということです。それぞれに高いレベルであれば、観る者を惹きつけるはずで、どちらも素晴らしい。

実際には、「見る者を唸らせる」ほどではないスタッフを比較するときに混乱が生じるわけです。「同一の評価基準」を使って異なる視点で評価(順位つけ)を試みることに一因があります。

「評価基準」を基本スキル(基本技術点)と表現スキル(プレゼンテーション)と言う具合に大別する工夫も考えられます。

スキーのジャンプ競技の「距離」&「飛形点」。スケートのフィギュアの、「技術点」&「表現力」。料理のコンテストでも、「味」&「見た目(盛り付け、色合いなど)」。美容師の大会でも、「基本技術」&「美的完成度」。

深い意味では、基本スキルにしても「表現力」ですし、「インパクトがある」というのも、表現力の一部分の特徴が強く、印象が強いことを言っていると思われます。

したがって、「基本スキルの完成度」と、「表現力(印象力)」といういい方に換えることで、評価基準の視点が異なる両者の「摩擦」を縮小できるようにも感じます。

評価基準を、評価点が、星形のグラフで表示されれば、同じ得点でも内容が違うことがよくわかると思います。

たかが「基本」、されど「基本」であって、応用力が高ければ、本来は基本レベルも高くあるべきです。

したがって、「どちらも、評価する」べきです。同じ得点の場合に、「基本スキル完成度」「応用力(表現力)」のどちらを優先するか、と言うことになりますが、それは観る者の主観でいいはずです。「順位」をつけることが目的でなければ、「同点同順位」。

「基本」の上に、「個性」がカバーされます。ただ、残念ながらアパレルの現場では、「基本」の高いレベルトレーニングがないまま、現場経験を積むケースが多いため、「個性」が、単なる「本人のキャラクター」と混同されます。

「キャラクター」は、ただの特徴であって、荒削り! 洗練されてはいない段階です。

そう考えれば、「基本のレベルの高さ」&「個性」の両方の評価で観ることが妥当と思います。

そして、会場の「空気」を自分のものにする魅力を持っているスタッフが、「オーラ」の高い人ということになります。人は、コミュニケーションをとるときに、相手の所作で55%、声の表情で38%を情報処理しています。実に、93%は、ノンバーバルな評価をしているということです。

ですから、ロールプレイングにおいても、登場して自己紹介までの段階で、少なくとも優勝に絡むスタッフは、すでに観る者の心に働きかけているはずです。

実際の売り場でも同様です。「販売スタッフ」であることが、一目でわかる!大切なことは、ただ「きれい」とかいうことに満足せずに、「お客様に心を開いている」スタンスがあるか、否かです。「お客様に向かい合っている」姿勢は、必ず「所作」に出ます。

バーバル(言葉)コミュニケーションが、ノンバーバル以外の7%を占めますが、まさに、「会話表現力」にこそ、「感性」「センス」が宿ると思います。人が、何かに注目(集中)していられるのは30秒と言われます。

だらだらした会話は、接客では不要。ピンポイントで、心に響くセンテンスを投げかけられるかの勝負です。

そういう「言葉」の感性、センスは、実は、「体験」の積み重ねから磨かれます。一言でいえば、「素敵な会話」のできる人と時間を共有すれば、その「体験」から、「素敵」を学ぶということです。たくさんの人と会うこと、観ることから、「感性」「センス」が磨かれるといってもよい。

 



結局のところ、下記の3つの考えが大切と考えます。

1.人は「自分の気分を良くしてくれる相手」を選ぶという、とてもシンプルな事実

2.人は、相手の所作、声の表情から、ほとんどを評価しているという事実

3.そして、「評価」基準は、実は、その人がそれまでに体験してきた「事実」と、その時に感じた「気分」が元になっている事実

「人」を「お客様」に換えれば、イメージが浮かんできます。

同時に、スタッフが何を求めているか?という視点も大切です。スタッフに何を求めるかではなく、現場でお客様と向かい合うスタッフが、何を求めているかを考えることです。

・売上をあげる手段

・接客技術を磨くスキル

・モチベーションを維持できる環境

いかにして接客における「フロー」状態をつくるかを提示できれば、ロールプレイング大会が現場に受け入れられるはずです。「フロー」状態とは、「チャレンジングで、高いレベルのスキルが求められ、目標があって、フィードバックがあり、創造力と集中力が必要とされている」状態のことです。

以前は、「売り上げ」を達成することが、ある種のフロー状態を生みだしていたといえます。今は、これに変わる「フロー」状態をつくることが大切なテーマです。そういう一環としてみてみれば、ロールプレイング大会も新鮮な取り組みになりそうです。



20年のアパレル体験で痛感したこと=仕事の悩みは、本当のところ、「人間関係」。2000年に、「レックス」を設立。「仕事を楽しむスキル」を学んで、「元気な現場」をつくるサポートをスタート。自分が「楽しい!」と感じれば、相手にも好感度が伝わる!大手アパレルとの長いお付き合いで、スキルは常にバージョンアップ中!



この記事に関連する記事