Jクルー “小売りの神様”デレックスラーCEOが退任

2017/06/09 04:25 更新


 【サンフランシスコ=立野啓子通信員】Jクルー・グループは、03年からCEO(最高経営責任者)を務めてきたミラード・デレックスラー氏が退任し、来月からホームファニシングのウェスト・エルム(ウィリアム・セノマ傘下)の元社長ジェイムス・ブレッド氏がCEOに就任すると発表した。“小売りの神様”と言われたデレックスラー氏は、筆頭株主であり、退任後も取締役会長として残るが、第一線からは退く。

 背景にあるのは、2年半続いた減収と3年間の赤字決算。11年度に二つの大手プライベートエクイティーによる30億ドルの買収もあって、20億ドルの長期借入金を抱えている。16年度決算は、24億2546万ドル(前期比3.1%減)、2357万ドルの赤字(12億4268万ドルの赤字)。

 昨年から新しいCEOを探していたが、今年4月、26年間クリエイティブ・チーフを務めたジェナ・ライオンズ氏が退任、本社250人の一部解雇などリストラが進められていた。

 デレックスラー氏は、ギャップ勤務19年、CEOとして80年代後半~90年代初めに「年齢を越えたカジュアル」を確立、「勢いがあるのはウォルマートとギャップだけ」と評されたギャップの黄金時代を築いた。94年度にターゲットなどディスカウンターが台頭して来ると、現在ギャップの最大ブランドでけん引力となっている低価格の「オールドネイビー」を確立。しかし99年度をピークにギャップは2年半の減速が続き、02年に退社した。Jクルーに移籍した後も手腕を発揮してきた。

 5月末のウォールストリートジャーナルの対談でデレックスラー氏は、「テクノロジーが小売りに与える影響を過小評価していた」「今日ほど変化のスピードが速いのは見たことがない」「もし10年前に戻ることができたら、もっと早く何か手を打っていただろう」など今日の小売り環境を象徴する発言をしている。ECの台頭で「商品のほかに価格とスピードが重要」とし、今後は低価格、親近感のあるブランド、デジタルマーケティングに投資していくと語っていた。

 今年の米小売市場は20年ぶりと言われる7000以上の店舗閉鎖が予測されている。デレックスラー氏の退任は、モールを中心に拡大を続けて来た「一時代の小売り」の終焉(しゅうえん)を象徴する動きともいえる。




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