丸紅ら3社 J-クレジット創出へ連携協定 森林価値の最大化を目指す

2024/01/05 06:26 更新


木を切らない林業を目指す和歌山県田辺市の森林

 丸紅は、森林に関わるコンサルティング会社の中川と、森林計測業務会社のディープフォレストテクノロジーズ(ディープフォレスト)と協業し、和歌山県田辺市の森林で、温室効果ガスの排出削減・吸収量をカーボン・クレジットとする「J-クレジット」を創出するための連携協定を締結した。

(北川民夫)

 丸紅は、中期経営戦略「GC2024」でグリーン戦略を企業価値向上に向けた基本方針の一つと位置付ける。森林資源の環境価値と経済価値の双方を高めるために、フィリピン、アンゴラ、マレーシアのほか、国内では秋田県能代市で環境植林を行っている。同事業で、日本国内の森林由来J-クレジットの創出、認証支援と、創出したJ-クレジットの販売を行う。

 中川は、「木を切らない林業」をコンセプトに、伐採された山を再造林・管理を主として育林業を行う、和歌山県田辺市のベンチャー企業。同事業で、森林所有者や自治体、森林組合などの地域のステークホルダーと、森林管理から販売までのサプライチェーンの最適化や森林価値の最大化について検討し、森林経営計画の策定・施業を行う。

 また、中川は、地域の子供たちがドングリから育てたウバメガシの苗木を植林し、和歌山県の名産である紀州備長炭の原木となるウバメガシの森の再生を進めており、同事業から得られる収益の一部をこれに充当する予定だ。

 ディープフォレストは、京都大学発のスタートアップ企業で、「森林DX」推進のため、ドローンとAI(人工知能)を使い、森林の状況を樹木1本単位で計測可能な解析システムを提供しており、同事業でもこのシステムを活用する。ドローンによる自動計測技術で、計測コストの低減と精度の向上が図れることに加え、作業プログラムの設定により、誰でも精度の高いデータを取得できる。

 これら3社は同事業を通じて、森林所有者に対する収益還元を起点とする再造林率の向上や、森林のデータ活用促進など、現在の日本林業が抱える課題解決を目指し連携する。将来的には、この地域で生物多様性を保全し、環境省が推奨する自然共生サイトの認定を取得し、J-クレジットの付加価値を向上する。

 丸紅は「森林に新たに付与された環境価値や技術を、地域一体となって活用していく仕組み作りを通じて、日本の新たな森づくりを追求し、持続可能な新しい林業のモデルを創り上げることを目指す」とする。

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