イトーヨーカ堂は、セブン&アイ・ホールディングスの22年度までの新たな事業構造改革に基づいて「スリム化による収益安定化」を目指す。
16年10月に発表した「100日プラン」で、店舗閉鎖のほか、食料品強化、衣料品などの非食料品の売り場の圧縮を進めてきたが、目標の下方修正を余儀なくされていた。「今のスピードでは間に合わない」(井阪隆一社長)として、衣料品の自主MDは肌着を除いて原則テナント化、存続決定は158店中103店とするなど構造改革を追加する。
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自主に厳しい視線
非食料品分野の直営売り場は「18年度比で50%に縮減する」。衣料品はPBなどの自主MDを肌着を除いて原則テナントに切り替えることを想定するから、18年度で業界2位の1500億円余りあった売り上げの半分以下になることも想定される。
3位のユニーはすでにドン・キホーテ流で再建を目指しており、1位のイオンリテールは分野ごとの分社化を急ぐ。GMS(総合小売業)衣料品の不振は従来からの継続を許さない状況になっており、ヨーカ堂は大幅な圧縮をするに至った。
井阪社長は赤字が続く状況とともに、「自主MDに拘泥(こうでい)しすぎた」と、非食料品分野の改革の遅れを振り返り、これまでの戦略に厳しい視線を送る。また業界全体の苦境と別に、ヨーカ堂固有の問題も指摘されてきた。「再生は難しいのではないか」とは100日プラン段階での同社衣料品部門OBの嘆き。
かつては業界をリードする商品力と効率を誇ったが、消費者心理を優先するとして〝素人〟であることが重視された時期が長く、人材育成が不十分というものだ。そうした状況のもとで大幅圧縮は回避できなかった。
54店のデータ活用
現在の158店は、分社化する食品館22店、存続可能とする103店、1棟貸しなど内外との連携を追求するがそれが難しければ閉鎖を検討する33店に分類された。
ただ、存続可能といっても直営の縮減方針と相まって、SC化することが前提だ。多くの専門店がオーバーストアやECとの競合だけでなく、販売員確保の問題で出店意欲を減退させる中で、広大な面積にテナントを収益につながる形で導入できるかが焦点になる。
残す103店は「生活動線内にある恵まれた立地」(井阪社長)という。
さらに直営売り場のテナントへの置き換えは100日プランの中で54店の事例を積み上げてきたことから、組み合わせるべき業種の「データが揃ってきた」として、テナント誘致に自信をのぞかせる。
グループのディベロッパー、セブン&アイ・クリエイトリンクがこのSC化に集中することで推進する構えだ。ただ、この間、店舗閉鎖の懸念がヨーカ堂の物件に対して専門店により消極的な態度をとらせることもあった。まずは店舗を明示したリーシングが欠かせない。