インド・ファッション業界が日本市場に熱い視線を送っている。日印国際産業振興協会(JIIPA)は、「インドトレンドフェア2023」を都内で開催した。出展各社がサステイナブル(持続可能)な生産背景や素材による多様なアパレル製品を中心に提案し、OEM・ODM(相手先ブランドによる設計・生産)を訴求した。同展はインドのテキスタイル・アパレルメーカー約180の企業・団体が出展し、過去最大規模で開催。期間中には、インドアパレル輸出促進協議会(AEPC)が、日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)加盟企業などを招いて懇親会を開催した。
SDGs貢献をアピール
レディスアパレルのサクシュデザインズ(ジャイプール)は、環境配慮型素材を使った製品を訴求した。バンブー繊維やサトウキビ原料の繊維のほか、トウモロコシ由来のPLA(ポリ乳酸)繊維、牛乳などの動物性たんぱく質を原料とするプロミックス繊維を活用してワンピースやブラウスなどを提案した。近年、欧米市場向け輸出で、サステイナブル素材への需要が高まってきたこともあり「3年程前から環境配慮型素材の扱いを強化している」という。
ニューティーアパレル(グルガオン)は、オーガニック繊維製品の国際基準「GOTS」(グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード)認証の自社工場内に、草木染と鉱物染めを行う染色工場を持っている。同社は「化学染料の使用を避けて、ベースとなる天然染料の調合で多様な色彩を表現する。日本の検査機関の基準もクリアしている」としており、日系有力セレクトショップとの取引を数年前から継続している。欧米向けが売上高の約75%を占める同社は、環境配慮型の生産設備を重視しており、屋根にソーラーパネルを設置した省エネルギー化や、下水の再生・再利用のための洗浄設備導入による節水などに注力している
NZシーズナルウェア(ターネー)は、レインウェアやウィンターウェアなどの生産を得意としている。最近では、再生ポリエステルやPLA繊維を使用した製品開発に力を注いでいる。欧米市場を主力販売先としながら、インド国内ではオリジナルブランド「ZEEL」(ジール)を卸販売する。同社は行政と協働で、貧困層女性など若者の経済的自立を促進するための施策として、ITや縫製技術などを学ぶ研修センターを運営している。同社は、研修を修了した人材を自社工場で雇用することで地域経済の活性化にも貢献している。
日印CEPAを背景に
AEPCは会期中に、JAFIC加盟企業などを招いての懇親会を初開催した。ナレン・ゴエンカAEPC会長は「インドは国策として繊維産業の発展を支援している。糸から製品までのワンストップソリューションを日本にも提供して、市場拡大を目指す」と強調。現在、インドの繊維・アパレル産業は、輸出を促進するために国内の様々な衣料品生産で、サステイナブルな製造システム導入を積極的に推進しており「水とエネルギーの節約、廃水と化学物質の管理、二酸化炭素排出量の監視などの施策を実践している。また、インドの工場は児童労働がゼロであり、世界的に重要な社会的コンプライアンス(法令順守)の基準を満たしている」と語った。
懇親会に参加したJAFIC加盟の企業からは「今回の展示会を訪問して、実際に発注を掛けた。製品の品質を確かめながら今後の取り組みを検討したい」「インド側は、自国の生産現場における縫製などの技術指導を求めている。この面では早期にレベルアップしてくるだろう」などの声が聞かれた。
インドが日本と締結している日本インド包括的経済連携協定(日印CEPA)は、インドの衣料品の日本市場への関税をゼロにするもので、二国間の貿易の主な推進力となっている。インドから日本へのアパレル輸入量は、この間の世界的なコロナ禍の影響にもかかわらず、過去3年間で大幅に増加しており「地政学的な状況の変化とインド政府の支援による機会の増加などを要因に、インドから日本へのアパレル輸出は今後も前年比20~25%の成長が見込まれる」(ナレン・ゴエンカAEPC会長)として、インドアパレル業界は市場拡大に向けて大きなチャンスとみている。