ファッション界の主要なイベントの一つといえば、パリやミラノ、ロンドン、ニューヨーク、そして東京などで開催されるコレクション。
その特別な時空間のベストパートナーとして必要不可欠な存在といえば音楽♪
といっても過言ではないと、FMラジオ番組を制作している頃からずっと、そう思っている。デザイナーが創作した作品の数々と音楽の絶妙なコラボレーションが奏でるバイブレーションには、ある種のライブ特有の醍醐味が宿っているから。
そんな極めつけの感動を過去2回、東京コレクションで体験することとなったブランドがある。それは「YOSHIKIMONO」。
ピアニスト、ドラマー、作曲家、プロデューサーなどマルチな才能あふれるアーティストYOSHIKIがデザインするキモノのブランドだ。それはまた「生家が呉服屋」という彼のルーツにも起因する。(これまでにもしばしば、繊研plusにて紹介されてきているが...)
デザイナー自ら奏でるピアノやドラムの調べと、個性豊かなコレクションの数々。極上のライブショーに招かれたようなひとときは、目や耳にする誰もの感情をたまらなく揺さぶったに違いない。
そこで、2月後半のCINEMATIC JOURNEYは、「夢見る春を音楽のチカラで♪」をテーマに、いま注目したい作品をいくつかピックアップしてみた。
オープニングは前述のYOSHIKI率いるバンド「X JAPAN」のドキュメンタリー映画『WE ARE X』からスタート
今年1月のカーネギーホールで開催された「YOSHIKI CLASSICAL」を幕開けに、3月3日の本作公開と同日に全世界同時発売のオリジナル・サウンドトラック、翌3月4日には待望のUKロックの聖地「ウェンブリー・アリーナ」公演など、ホットな話題がつづく彼らの光と影に彩られた過去から現在に至るリアルなストーリーだ。
とりわけ多くの著名人からのコメントなどと共に、リーダーYOSHIKIの素顔にスポットを当てたシーンから浮かび上がる生と死に対する眼差し、そして妥協なきアーティスト魂にはただただ感服するばかり。
と同時に、幼少時から常に彼自身の軸となってきたであろう音楽がもたらすチカラを、観る者それぞれのココロの扉をノックしてくれるかのようでもある。
ちなみに監督はローリング・ストーンズのドキュメンタリー『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」』を手掛けたスティーヴン・キジャック、製作陣は音楽ファン必見の話題作『シュガーマン 奇跡に愛された男』という、音楽映画界の匠が集結している点も興味深い。
最後に本作の顔、YOSHIKIのメッセージを下記に;
この映画はロックバンドの物語ですが、これは人生についての物語でもあるのです
(本作資料より抜粋)
この言葉にすべてが集約されている。
さて、つづいてのCINEMATIC JOURNEY「夢見る春を音楽のチカラで♪」の向かう先は、『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』✈✈
ヨーヨー・マという音楽家の名を、もはや知らない人の方が少ないかもしれない。あえて称すなら、「世界的チェロ奏者」または「今世紀最高のチェリスト」という、本作資料にも明記された表現が最適なのだと思う。
その彼が2000年に立ち上げた音の文化遺産「シルクロード・プロジェクト」の軌跡を、彼自身のルーツと共に描かれたドキュメンタリーだ。
文化は終わらない。音楽のチカラで文化を進化させ、世界を変える
劇中で語られた彼のセリフにもある通り、古代の貿易ルートであり異文化の交差点ともいえるシルクロードに縁のあるメンバーたちと共に、ケマンチェ(ヴァイオリンの祖先)、ピパ(中国琵琶)、尺八、バグパイプなど目にすることの少ない東西の伝統的な楽器による音と才能のスーパーセッションを味わえる♪
原題の『The Music of Strangers』からイメージできるかと思うが、総勢50名以上の楽器演奏者、ボーカリスト、作曲家、編曲家、ビジュアル・アーティストたちから成る「シルクロード・アンサンブル」。彼らは世界各地で集い、共に文化や伝統を共有しつつ、未来へと紡いでいく。
そして音楽というフィルターを通じ、世界を見つめ、絆を深めるチャンスになるような♬
CINEMATIC JOURNEY「夢見る春を音楽のチカラで♪」。ゴールはこちら✈✈
きっと聞いたことがありそうなヒットソング60曲以上満載の元気が出るシネマ『SING/シング』
フル・アニメーションかつまた人間的生活を送るアニマルワールドが彩る、オトナだからこそ胸がキュンとくる本作は、フランク・シナトラやデヴィッド・ボウイに始まり、レディー・ガガやテイラー・スウィフトまで、幅広い世代をカバーする楽曲のバリエーションも魅力の一つ。
よってキャスティングのこだわりも格別なのだとか。つまり、単なる声優というような役割ではなく、セリフと同じくらい歌唱力に優れたオールスターキャストぞろいというわけだ!
ちなみに、私も不勉強ではあったのですが、スカーレット・ヨハンソンはトニー賞の受賞歴もある、熟練したシンガーソングライターで、アルバムも2枚発表しているのだそう。(本作資料にて勉強!)
さて、そんなスカーレットが演じるパンク・ロッカーのヤマアラシ、アッシュ(上記画像)は、スタイリングもなかなかイケているのですが、ヘアにもぜひ注目していただきたい。というのも本作はアニメにもかかわらず、通常のヘア・ドレッサーもいたのです!
私は本物の美容師のようなもの。実際に髪の毛をブラッシングしたり、カットしたりする道具もちゃんと持っているのよ
と語るのはヘア&ファー担当のセリム・ドライア(本作プレス資料より)。
画面からだけでは計り知れない、クリエイター魂が詰まった本作。観賞後には、それぞれ馴染みのナンバーを口ずさみながら、気分は春うららかも
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中