愛と輝きは比例するのだろうか(宇佐美浩子)

2017/02/10 11:14 更新


昨年末から時代のキーワードではないかなぁと、勝手に思っている「光」。

それは必ずしもキラキラと目に映るものだけでなく、キモチをアップしてくれるような「輝き」を象徴しているようにも思う。 

たとえば、兼ねてより世相や音楽などを交え、そのエンターテインメント性に富んだプレゼンテーションに心魅かれているコスメのブランド『キールズ』 

先日開催された新作発表会の場で、目と耳にした内容に、次のようなものがある(過日、当コラムでもご紹介した『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズのブリジットを例にして…)。

 それは「しあわせ美肌」のオーラとでもいうべきか、

 愛に満たされているときの肌の輝きは、健康的でハッピー

 なのです。ぜひともあやかりたく思ったのはワタシ以外にもきっと…(笑)

 


50年以上「キールズ」が信頼と情熱を寄せるハーブの一種「カレンデュラ」は中世から「しあわせを呼ぶ花」として知られているそう。

 

というわけで、ヴァレンタインデーがやって来る2月のCINEMATIC JOURNEYは「愛と輝き」をテーマに、今まさに世界的輝きを放っているシネマ『LA LA LAND』ほか、注目すべきさまざまな『愛』にまつわる作品をピックアップ

 

 

 

二人の主役はどのシーンでもすごくロマンチックで美しく見える

(『マリアンヌ』プレス資料より)

 

本作『マリアンヌ』の製作者の一人、スティーヴ・スターキーの上記コメント通り、こだわり抜いた衣装を担当したジョアンナ・ジョンストンへの賛辞をまとう主演の2人。ブラッド・ピットとマリオン・コティヤール。

とりわけラグジュアリーメゾン「クリスチャン・ディオール」のミューズとしての顔も持つマリオンの美しさといったら、オンナの私もドキリとするほどの輝きを放っている。

時を同じくして公開(2月11日~)の彼女の近作『たかが世界の終わり』などで見せる素朴な主婦役とは異なり、複雑な背景を持つ精神的タフさと、美貌を兼ね備えた妻役を演じる本作。

その何れも同一人物が演じているのですから、女優が放つオーラの変幻自在さは、マジシャン並みと言っても過言ではなさそう。

 

 

 

さて、「輝き」ばかりが先行してしまった本作が描く「愛」とは?

仕事上の任務「仲の良い夫婦を演じる」がきっかけで出会ったマックス(ピット)とマリアンヌ(コティヤール)。危険極まる任務を遂行後、解散となるはずが…実の夫婦にゴールイン!

「めでたし、めでたし」と思いきや、思わぬ試練が二人に立ちはだかる。そして試される「真の愛」の行方に、観る者のキモチも高ぶるに違いない。

 

 
『マリアンヌ』
2月10日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国公開
©2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
配給:東和ピクチャーズ

(予告編)


それでは次なる目的地、江戸時代初期の日本へ向けて、巨匠マーティン・スコセッシ監督等と共に出港

 

 
作品公開に先行して開催された監督来日記者会見にて。
左から窪塚洋介、マーティン・スコセッシ、浅野忠信。(2016年10月19日 Ⓒhu)

 

現在すでに公開中のシネマ『沈黙-サイレンス-』とあり、そのストーリーをご存じの方も多いかと思われますので、ここではあえて作品の内容を省略し、スコセッシ監督の記者会見の席上などから浮かぶ、本作における「愛と輝き」について個人的主観も交え、フォーカスしてみたく。

当然のことながら、出演する俳優たちの演技力のすばらしさは、作品に輝きを与えていることは言うまでもなく、そんな彼らを監督は次のように

 14歳の頃に見た溝口健二の『雨月物語』をきっかけに、ずっと数多くの日本の映画を観て、親しんできていますので、出演者の顔も僕にとっては馴染みになっていきました。たとえば本作に出演していただいている浅野忠信さん(「パーフェクト!途方もない力量で演じきった」と絶賛)、イッセー尾形さん(主演作『太陽』を拝見)、塚本晋也さん(映画監督ですが、俳優としても尊敬している)、また窪塚さんだけは作品は拝見しておりませんでしたが、オーデションがあまりにも素晴らしくて即決!こうして私の家族のような人たちを集めたのです

 

監督来日記者会見にて。(2016年10月19日 Ⓒhu)

 

一方の「愛」については、原作である遠藤周作の『沈黙』を初めて手にしたという1988年以来、監督の本作に懸ける愛と情熱をコメントの端々から感じる。その想いの深さにただただ感動し、言葉を失い、沈黙してしまうワタシがいる。

 この映画と共に30年近く日本と関わってきて、私の心は開かれました。幸いにも、いかに自然と暮らし、自然の一部となるか、といった心情をつかむことができたのです。それはまさに普遍的な精神性でした

 ちなみに遠藤周作とは生前、ニューヨークで1時間ほどの出会いを実現したそうだ。そして最後にもう一つ、私が最も印象深く残っている監督のコメントがこちら

 このような(歴史物語であり、内面の物語である)映画を作り、世に送り出すことで、人々に何かを考えさせる機会になるかもしれません

 また監督自身についても、

 ❝考えることを放棄すべきではない。逆にもっと深く探求しなければならないと思うのです❞

 と語られた。

 思い返せば私自身も微力ながらこのようなコラムを書きつつ、読んでくださる方に何かを伝えたいという「希望のヒカリ」的思いは常にある。

それはまたファッションデザイナーやアーティストが、自ら創り出す作品を通じて、その思いを共有したいと願うことと似ているのではないかなぁと?!

 

 
『沈黙-サイレンス-』
絶賛上映中!
Ⓒ2016 FM Films, LLC.  All Rights Reserved.

(予告編)


CINEMATIC JOURNEY「愛と輝き」編の最終目的地へと移る前に、少しばかり「輝き=光」に注目したアートな寄り道を

まずは9月3日まで、東京・表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で開催中の「DAN FLAVIN」展。

ミニマリズムの主唱者の一人で、蛍光灯を用いた作品で知られるアーティスト、ダン・フレイヴィン。媒体としての光を探求した末、既製品の直管蛍光灯のみを使用し、さまざまな配置により誕生する作品の数々は、観る者それぞれのココロの眼で楽しむことができる。

なお本展は、パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンが所蔵するコレクションの中から未公開作品を世界中のエスパス(東京、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京)にて紹介し、芸術的活動を展開するプロジェクト「Hors-Les-Murs(壁を越えて)」の一環だとか。

 

 
『Untitled (to Alex and Nikki) [無題(アレックスとニッキーへ)]』 (1987年)
Courtesy Fondation Louis Vuitton © Adagp, Paris 2017


また、3月20日まで、東京・西新宿のNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で開催中の「アート+コム/ライゾマティクスリサーチ 光と動きの『ポエティクス/ストラクチャー』」。 こちらも、タイトルにある「光と動き」のみならず、音と

の融合も興味深く、しばし見入ってしまう。そしてまたカラフルな色彩と共に表現される「感情」が密かに宿っているような…

それではそろそろ「愛と輝き」に満ちた最終目的地「LA LA LAND」へいざ✈✈

 

 

 

「ミュージカル系はどうも…」なんて言わせない!

 と言わしめるのが本作『ラ・ラ・ランド』。なぜなら、まさに私がその一人だから。

「世界各国でのノミネート数だけでも400近くに上っているのではないか?」という噂も、疑うことなくうなずける。

その理由は何といっても主演の2人、エマ・ストーンの歌声とライアン・ゴズリングのジャズピアノいずれもリアル♪(なんとライアンは3か月間猛練習し、習得したとか)それはまた映画への限りない愛と情熱の証ともいえよう。

 

 

そしていつの間にやら、観ている私たちでさえも二人の恋をシェアしているかも

歌あり、ダンスあり、ロマンスあり!もちろん物語としての魅力にあふれた本作のタイトル『LA LA LAND』は単なる語呂合わせなのかと思いきや、それなりの意味があるのだそう。 

☑ロサンゼルス、主にハリウッド・エリアの愛称

☑陶酔し、ハイになる状態

☑夢の国   

(以上、プレス資料より)

 

 

 

時に人は夢を追い、挫折してしまいそうになることもある。でも、笑顔のエンジェルが待ち受けていることだってある。だから、希望の輝きに向けて軽くステップを踏みたくなる。それが、『ラ・ラ・ランド』の魅力のような気がしてならない♫

 

 
『ラ・ラ・ランド』
2月24日よりTOHOシネマズ みゆき座ほか全国公開
© 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
Photo credit:  EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.


(本予告編)




うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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