「その服を選び、着る人はドンナ(=イタリア女性ではありません!笑)人だろう?」と、思うことはありませんか?
「服装は人となりを表すものだから…」
と、繰り返し親や教師から伝授された言葉がシッカリと、脳内のどこかに組み込まれてしまっているからなのか?! 自身の仕事とは裏腹に、お決まりのmy styleという路線からはみ出すことなく、つい似たようなテイストの服選びをしてしまっている。
そんなワタシなどとは比べ物にならない人物、あのカール・ラガーフェルドが語った言葉に次のようなものがある。
私はある意味、生まれた頃から着飾っていた。だらしないのは、私らしくない
(西武・そごうのエクスクルーシブコラボライン「LIMITED EDITION by KARL LAGERFELD」の資料より)
即座に「ごもっともでございます」と頷いてしまう、お言葉です。
そこで今回のCINEMATIC JOURNEYのテーマは、「服がキャラクターを語る•シネマ編」。気になる新作シネマ数本にフォーカスを当て、監督のコメントも添えつつ、なりたいキャラクター演出のアイデアをシェアしたく!
まずは、日本の町中から消えつつある銭湯の「おかあちゃん」役を、宮沢りえが熱演する『湯を沸かすほどの熱い愛』。
おそらく、ある世代の観客にとっては、「あの、りえちゃんが、お母さん役か~」と、時間の経過を実感するのではないかと思うのですが、その、りえちゃんが、肝っ玉母さんぶりを好演しているのが本作。
銭湯「幸(さち)の湯」を営む幸野家を舞台に、「絡まった糸がほどけていくような」晴れやかな気分に浸ることのできる、家族愛が魅力のストーリー。
とりわけ余命2カ月の宣告を受けたお母ちゃんがおこす潔いアクション「must do」の数々は、観る者に生きる勇気を与えてくれるかのようでもある。
さて、登場人物たちのキャラクターを視覚的に演じてくれるのが衣装。それらは台詞無しで、物語ってくれる重要な存在だ。
というわけで、本作キャストの服選びや着こなしに関して、なんと中野量太監督自ら回答下さったので、下記にご紹介を!
まず、お母ちゃん役の宮沢りえさん。
母のイメージとして、あまり体にタイトにならない、柔らかいフンワリした衣装を選びました。また銭湯の象徴として、幸の湯の法被を作ったのです。これは親から子へと引き継がれる良い役割を果たしていると思います
次に、ある日ふらっと家出をし、1年あまり経過した頃、なんと病身のお母ちゃんにより、連れ戻しに成功するお父ちゃん役のオダギリジョーさん。
フーテンな感じを出すために、全体的に少しルーズな感じにしました。わざと襟の伸びたTシャツにしたり、ダボっとしたパンツに、裾をロールアップしたり。また普段は常に裸足にサンダルといったスタイルです。だからこそ、最後のきっちりした喪服が効いてくると思っています
そして、二人の娘たちを演じる杉咲花さんと伊東蒼さん。
特別感を出したく無いので、ごく普通の子どもらしさが出るようにしました。基本、デザインに文字が入っているのが好きではないので、避けました
また、母娘3人の旅先で出会うヒッチハイカーの青年役、松坂桃李さん。
ジーンズに、Tシャツに、長袖のネルシャツ。まさに旅人、ヒッチハイカースタイルです
最後は、男手一人で子供を育てる探偵役の駿河太郎さん。
ちょっとくたびれたスーツにしました。サイズもわざとワンサイズ大きめに! また、より馴染んだ感じを出したかったので、眼鏡は自前です
と語って下さった中野監督。そのコメントの数々を、ぜひスクリーンでご確認くだされ。
続いて向かう先は、ロンドン✈
あの人気シリーズ『ブリジット・ジョーンズの日記』待望の第三弾! 題して『ダメな私の最後のモテ期』。
ちょっとポッチャリだけど愛されキャラのヒロイン「ブリジット・ジョーンズ=レニー・ゼルウィガー!」という公式に変化はないのだが、今回はエイジングと反比例するかのように、ボディもスッキリとシェイプアップされ、仕事もテレビ局のプロデューサーとステップアップ!
しかしながら、ラブに関しての道は相変わらず…
タイトル通り、モテ期の到来とはいうものの、偶然にも再会した弁護士の元カレ、マーク・ダーシー(コリン・ファース)との恋の再燃か? あるいは音楽フェスで出会ったアメリカ人のセレブな実業家、ジャック(パトリック・デンプシー)とゴールインか? ところで、生まれ来るベビーのパパは??
とまあ、相変わらずの波乱万丈なストーリー展開で、観る者の心をギュッとつかみつつ、さまざまな学びの機会を共有することとなりそうな本作。果たしてその結末はいかに???
さてここで、今回のテーマとなる「服がキャラクターを語る•シネマ編」ということで、本作の衣装について、手にした資料を基にちらりご紹介させていただきたく。
まずは、シリーズ1作目から、ずいぶん成熟し、シックに演出したというヒロインのスタイリング。ちなみに衣装は劇中60着以上、着替えているとか。
そうした中でも、キャサリン妃が結婚前にアクセサリー部門のバイヤーをしていたといわれる「SIGSAW」と、スコティッシュカシミアメーカー「Brora」は、彼女にとっての定番中の定番ブランド。そこに「ジミー・チュウ」、「H&M」、「ニナ・リッチ」などが加わり、折衷主義風なブリジットの個性を表現しているそう。
また主演のレニーが身に着けることにこだわったという「ティファニー」のオープン ハート ペンダントも、ブリジットの象徴的なものの一つのようだ。
なお、追悼のシーンの美しい黒いレースのドレスはスペインの未亡人のイメージ、またウェディング・ドレスはグレース・ケリーの花嫁衣装を参考にしたとのこと。
一方、メンズ・ファッションに関してはというと;
コリン・ファース演じるマークもブリジット同様、より洗練とセクシーさがプラスされ、かつてのすべて「バーバリー」から、「トム・フォード」と「ギーブス&ホークス」を交互に着用する紳士へと進化を遂げているそうだ。
他方、パトリック・デンプシー演じるジャックは、「ポール・スミス」、「プライベート ホワイト」、「サンスペル」など、美しくて丁寧な作りのイギリスの服を、彼らしい着こなしで演出しているとのこと。
CINEMATIC JOURNEY「服がキャラクターを語る•シネマ編」。最終目的地はスペインが誇る巨匠、ペドロ・アルモドバル監督の最新作『ジュリエッタ』。
私がイメージするアルモドバルといえば、女性の心理描写を巧みに描く物語の展開と、鮮やかな色彩(ファッション、インテリア、アート)、そして音楽へのこだわりが格別な監督の一人といえる。それはかつて来日した際、ラッキーにもインタビューをさせていただいた時点と未だ変わることがない。
そして彼を語る時、やはりスペインの熱き情熱を感じる「赤」は必要不可欠な色彩の一つではないかと思う。本作でも下記場面写真の衣装を含め、随所に「赤」のアクセントが効いている。
またシャネルやアルマーニなどのファッションも話題を呼んだ過去の代表作『ハイヒール』においても、赤のスパイスがスクリーンを彩っていた。
ここで本作について、簡単にご紹介を…
主人公ジュリエッタの過去から現在に至る間の出会い、そして別れを軸に繰り広げられる人間ドラマ。その核となるのは夫の事故死、そしてある日突然、失踪した最愛の娘への想い。母娘の再会はかなえられるのだろうか?
『ジュリエッタ』
11月5日(土)より新宿ピカデリーほかロードショー
©El Deseo
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中