Artに恋するFashion&Cinema(前)(宇佐美浩子)

2015/11/01 15:32 更新


芸術の秋、食欲の秋…秋にまつわる表現はさまざま。それはきっと人々の情熱が向かう先も、多様性に富んでいるからかも(?)しれない。

さて、「Artに恋するFashion&Cinema」と題し、前後2回つづけてご紹介する11月の当コラム。その前編となる今回は「Fondation Louis Vuittonが日本来航!?」をテーマに、シネマクルーズいたします。

 

 

 

まずは予備知識として、こちらのシネマ情報から。

5月下旬からスタートし10月初旬まで「渋谷シアター・イメージフォーラム」にてロングランヒットし、現在全国順次公開中の「だれも知らない建築のはなし」。

国内外の名だたる建築家や作品が登場する中、神戸港のメリケンパークに建つ、高さ22mほどの巨大な鯉のオブジェとして知られる「フィッシュ・ダンス」が登場。その設計者こそが今回のキーパーソンともいうべき、現代建築界を代表するフランク・ゲーリーだ。

そんな氏の代表作の中の代表作にして、21世紀を代表する建築物と称され、世界的に注目を集めている「フランスの深い文化的使命感を象徴する壮大なガラスの船」が、このほど東京・表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京に来航した!?

 

 

 

フランク・ゲーリー / Frank Gehry パリ-フォンダシオンルイ・ヴィトン建築展」。タイトルそのままの本展は、昨年10月にパリ、ブローニュの森に開館したフランク・ゲーリー設計による「現代アートのための新たなスペース」創造のプロセスを目の当たりにすることができる、唯一無二のチャンスだ。

 なぜなら、すでにパリ、北京でも同様の内容で開催されてきたのだが、単なる巡回展ではなく、フランク・ゲーリーとそのチームとの協力により完成した特別な空間、いわばインスタレーション作品となっているから。

例えば、この壮大なるプロジェクトのための初期のスケッチや、建築プロセスにおいて製作された数多くの模型など、いずれの展示物も原物であり、その配置や導線、それら全てが氏のこだわりによるものだと知れば、誰しも深く感動するはず。

 

 

 

そこで、当プロジェクト担当のセバスチャン・シェルエ氏に、本展の更なる魅力を伺ったところ、次のようなコメントを頂いた。

 歴史と21世紀の未来に向けてのプロジェクトであるこの偉大なるクリエイションは、内部空間の創造からスタートしており、かつまた自然との対話を示唆しています。

よって来場者の方々は太陽の動きに伴い生じる光と影から、訪れる度にさまざまな発見がもたらされるでしょう。それは日本の建築文化を代表するお寺にも通じる、光の射し方による影の膨張と収縮にも相通じると思うのです。全ての建築物は4次元なのですから・・・

 その言葉を体感しに、来年1月末日までの会期中、是非とも異なる時間帯にしばしば訪れてみてほしい。

 

 

 

ところで、ご存知の方もおいでかとは思われますが・・・

氏の長年の友人で、今は亡き映画監督シドニー・ポラック。初のドキュメンタリー作品となったのが、なんと『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』(2005年)だったとか。日本でも2007年に公開されていたそうなのですが、自身のあいまいな記憶の中では見逃したような・・・

DVDなどでチェックしてみたくなったのは、きっと私だけではないかも?

また視点は異なるものの、12月12日より全国順次公開予定の「創造と神秘のサグラダ・ファミリア」。現在進行形の“建築”の現場を中心に、臨場感あふれるリアルな内容にご期待のほど。


 

 

前述の展覧会や建築にまつわるシネマ同様、大義でのアートといえるのが文学。

 「大切なものは、目に見えない」

 この言葉に出会ったコドモの私も、気づけば十分すぎるオトナ。そして今なお、世代も、国籍も、性別も超えて愛される正真正銘の不朽の名作「星の王子さま」に、その先のストーリーが誕生した。『リトルプリンス 星の王子さまと私』がそれだ。


 

 

サン=テグジュペリ エステート(権利管理者)が初めて認可したという本作。

資料によれば、1943年の出版から、270以上の言語・方言に訳され、4500万部以上のセールス・・・と、驚くべき数字の数々に裏打ちされた物語なのだが、さらに「つづき」が加わり、手触り感×臨場感の「ハイブリッドアニメーション映画として劇場に登場」と聞けば、これは見ないわけにはいかない!そう思うオトナがきっと、多いはず。

 参考までに、サラリとそのこだわり様をシェアすると――

8年がかりの一大プロジェクトには、250人ほどのスタジオを超えて集結したアニメ界のトップクラスのアーティスト。そしてオリジナルはもちろんのこと、日本語吹替版もまた個性豊かな顔ぶれによるボイス・キャスト、並びに主題歌は松任谷由実の書き下ろしによる新曲…と、まさに夜空に輝くたくさんの星を一堂に集めた作品といえる。

 

 

 

最後に少しだけ、スクリーンでのワクワク感を妨げない程度に、内容のキーワードをいくつか。

9歳の少女が引っ越した先で出会う、旧式すぎるプロペラ機が駐機された、なんとも近寄りがたい不思議な風貌の隣家の老人。

だがある日、隣から飛んできた紙飛行機につづられた温もり感のある挿し絵と物語が、二人の距離をグッと、縮めることとなる。

それは、かつて飛行士だった老人が出会った王子との思い出のお話…

 


リトルプリンス 星の王子さまと私』 
11月21日より2D/3D 日本語吹替版/字幕版にて新宿ピカデリーほか全国公開。
©2015 LPPTV – LITTLE PRINCESS – ON ENT – ORANGE STUDIO – M6 FILMS – LUCKY RED



うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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