「暑い夏の開放的なファッションも好き。でもやっぱりモード感漂うスタイリングは、涼しげな空気が肌に心地よい季節からかなぁ」ーーというのが多数派では?
そんな思いを抱きつつ、クローゼットと向かい合う瞬間を捉えたかのような絵画に、出くわした。ところは銀座の「資生堂ギャラリー」。
現在開催中(~9月20日)の展覧会「絵画を抱きしめて」のPart2「絵画に包まれて」に展示されている佐藤翠の作品「Mirror closet」と「Mirror shelves」が、それ。
カラフルでロマンチックなファッションアイテムがずらりと並ぶ、巨大なクロ―ゼットを連想させる作品は、フシギと女子気分がアップさせられるように思うのは、きっと私だけではないはず。
さて、そのメンズ版ともいうべきシネマが「キングスマン」。
「マナーが紳士を作る」
というせりふがピッタリはまる主演のコリン・ファースを筆頭に、英国的ウィットとユーモアに富み、かつまた正義感があふれる超ダンディーなエリートスパイたち。ファース初の挑戦となるアクションはもちろんだが、何よりもそのファッションに、ついつい目がいってしまう。
というのも、表向きにはロンドンの有名なテーラーが軒を連ねるサヴィル・ロウの1軒「キングスマン」の仕立て職人という設定だから。
さて物語のポイントの一つとなるのが、当スパイ機関の新人採用試験に集まる候補生たちの一人(タロン・エガートン)が、数々の試練を乗り越えていくプロセス。と聞くと、いかにも優等生的ストーリー展開かと思うかもしれないのだが、実は「笑い」が本作の機密情報といえる。
ちなみに、そのカギを握るスパイ必須多機能ガジェット。たとえば、傘や靴、ライター、ペンなどなど。見るからに英国紳士的小道具に隠れ持つユニークな技の数々を、ぜひともスクリーンにてご確認あれ!
キングスマンは新時代の騎士。スーツは現代の鎧だ
このせりふは決してキングスマンだけでなく、ビジネスマンたちもまた“納得”の一言かも。というわけで、下記の情報をシェアしたく。
「イギリスのファッションECサイト『Mr.Porter』が提供した衣装をベースに、本作監督マシュー・ヴォーンと衣装デザイナーのアリアンヌ・フィリップが、カプセルコレクションとして「Kingsman」をリリース。映画の衣装として使用するとともに販売している」とのことだ。
早速サイトを拝見し、思わず「なりきりファース」志望の男性諸氏も多々おいでではないかなぁと。。。
続いての変身シネマは、コリン・ファースよりさらにキャリアの長い名優、ダスティン・ホフマンの「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」。
荒れた生活を送っていた少年が、唯一の家族である母の死をきっかけに、全寮制の名門少年合唱団へと転校。そこで出会うのが生涯の良き師となるであろう、厳格な指導者(ホフマン)。
日々、周囲とぶつかり合う中で気づく、限られた時間の大切さ。すなわち天賦の才、ボーイ・ソプラノ。結果、さまざまな困難を乗り越え一人の人間として変身、というよりは成長していく。いわばハッピーエンドな物語――なのですが、ここにはシネマ・トリビア的要素が潜んでいる。
それは、ホフマンの自伝的物語でもあるというのだ。なぜなら彼もまた若かりし頃、音楽家(ジャズピアニスト)への夢を抱き、音楽学校で学んでいた経験があるのだそう。よって、「自身の初監督作品のテーマが音楽だったわけだ」と納得。
ともあれ、人気シンガーのジョシュ・グローバンと共に歌うラスト曲「ミステリー・オブ・ユア・ギフト」に至るまで、数々の名曲を美しく清らかな歌声(アメリカ少年合唱団)で彩る本作は、耳にも心地よい1作だ。
それでは変身シネマ。そのフィナーレを飾るのは、ズバリ「登場鳥人間?」がヒロインを演じる「バードピープル」。
多かれ少なかれ、一度くらいは誰しも抱くであろう変身願望。
たとえばファッションや、ヘアスタイル、メーキャップなど自ら実現可能な見た目的変身、またライフスタイルそのものの変化に挑む能動的方法もあれば、想いもよらない受け身的ハプニングによりもたらされる、なんていこうともある。
本作は、それら両方の2つのストーリー展開が待ち受けている。
舞台はパリ、シャルル・ド・ゴール空港を目の前に控えたホテル。主要登場人物の一人は、公私にわたるすべての現実を白紙に戻し、新たな世界へと飛び立つ決意をするアメリカ人男性ゲスト。
もう一人は、そのホテルのメイドとして働くフレンチ女子。彼女こそが何の前触れもなく、ある晩スズメに変身してしまうのだ。果たして、彼女はどんな光景を目にすることになるのだろう?なお、スズメ時間は永遠ではなく、ある一定期間というオトナのおとぎ話的設定。
余談ながら、パスカル・フェラン監督の本作にまつわるコメントが面白い。そこでいくつか下記にご紹介を。
スズメと仕事をした経験者がいなかったので、まずは孵化から育てました
それぞれのスズメに名前をつけていました・・・残念ながら、彼らからの近況報告は受け取っていません(笑)
今、フランスで最も才能ある若手女優の一人、ヒロイン役のアナイス・ドゥムースティエは、スズメに似てると思ったのです…彼女であれは、私たちはスズメへの変身を信じられると
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中